2023年9月12日火曜日

お引越し

 長らく休眠していたこのブログはコチラで再開しました。

2010年12月6日月曜日

Hard Rock Cafe Ueno

久々の更新でまた食べ物の写真.Hard Rock Cafe UenoのカリフォルニアバーガーにSamuel Adamsである.Hard Rock CafeはEdinburghとLondonでは行ったことがあるのだが,日本で行くのは初めてである.コストパフォーマンスは決して良いとは言えないが,味は悪くないし,何よりSam Adamsが飲めるというのがうれしい.

私にとってSam AdamsといえばRobert B Parkerのボストンを舞台にしたSpenserシリーズで主人公のSpenserが愛飲しているビールである.アメリカのビールはBudもCoorsもラガーのくせに甘くて好きではないけど,このSam Adamsは所謂エール的な甘さなので見つけると飲んでいる(日本やヨーロッパではほとんど見かけないけれど).

そんなビールを愛飲するSpenserは,作品と一緒に歳を取る主人公で,初期の70年代の作品ではボクシングを引退した凄腕探偵で若々しかったのだが,2000年以降は年齢的には初老と言ってもいいくらいであった(相変わらずケンカ最強で凄腕ではあったが).このSpenserは料理もうまく,日本限定ではあるが『スペンサーの料理』なんていう,作中に登場した料理のレシピ本と酒ガイドまで出版されているくらいである.このままいくと後期高齢者になるぜ,と思っていたのだが,今年1月に作者のRobert B Parkerが亡くなってしまって,Spenserも幾分歳は取ったが敏腕探偵のまま歴史に残ることになった.

元々Spenserシリーズを読み始めたのは,まだ小学生の頃で,親父に何か面白い本はないかと聞いたときに勧められて,はまったのである.高校の終わり頃になると,英語のペーパーバックで読むようになって,ずっと新刊が出るたびに読んでいた.そんな愛読する作家が1人いなくなるというのは,結構さみしいものである.最初に英語のペーパーバックで読んだA Savage Placeは,今見ると一晩で簡単に読めてしまいそうなくらいだが,当時は結構時間をかけて頑張って読んだことが思い出されて,ちょっとしんみりしてしまう.

2010年11月18日木曜日

eps

このブログ記事をちょっと前にアップしたと思っていたのだが,どうもアップし損ねていた模様.なので,ちょっと前の写真だけれど,大手町つばめグリルのビール(大)である.我々夫婦は時々大手町の丸善に洋書をあさりに行くのだが,ついでにご飯を食べるとなると,色々考えるのが面倒なので,すぐ上にあるつばめグリルに入ることになる.何を食べても結構美味しいし,何よりインパクトのあるビール(大)が飲めるのがうれしい.こいつは1リットルもあって,グラスではなく厚い陶器なので,飲んでると腕が疲れるくらい巨大なのだが,他では飲めないので,なんだがそれだけで心がうきうきするものである(実は私はレーベンブロイがそれほど好きではないので,中身はハーフ&ハーフだったりするのだが).先に出てくるソーセージとザワークラウトで半分くらい飲んで,ハンバーグで残りを飲み干すと,もうお腹いっぱいである.

閑話休題.久々にLaTeXネタを.今年もせっかくなので紀要に論文を書くことにしたのだが,世間のほとんどの印刷所同様LaTeXの入稿が不可能である.PDFもだめなので,MS Wordで仕方なく入稿することになる.その際の,LaTeX文書からMS Wordへの変換の作業の効率化のための個人的ノートを書いておこうと思う.

まずLaTeX2rtfが必須.ちょっと前まで,それほど変換の精度が良くなかったのだけれど,最近のバージョンはかなり強力で,地文はセクション分けもイタリックやスモールキャピタルなどのフォント指定も問題なく変換してくれるし,参考文献も大丈夫である.一応出力はリッチテキストだが,MS Wordで保存し直せば大体問題はない.

あとは難所の例文と図表である.例文はもう諦めて,手打ちするしかない.図表は私の場合,treeとAVMだが,こいつはMS Wordでやると大変面倒くさい(もちろん方法は知っているが,あんなことするくらいなら,最初からLaTeXで書かないほうがよい).そこで画像にして入稿することになる.私のあまり多く無い経験からいくと,やはり画像はepsで提供するのが無難なようである(さすがにIllustratorが使えない印刷所はないだろうし).

ということで,せっせとtreeやAVMを1つ1つepsファイルにしていく.具体的には,以下のようなtexファイルにソースを書いて(コピーして),コンパイルしてdviを作る.

\documentclass{article}
\usepackage{必要なものを}

\begin{document}
\thispagestyle{empty}
ここに図表のソースを
\end{document}

その後,以下のような感じでdvipsしてやると,図表だけのきれいなepsができあがる.

dvips -E hoge.dvi -o hoge.eps

これで生成されたepsファイルを上述のテキスト部分のMS Wordファイルと一緒に入稿すればよい.やりたければMS Wordファイルにepsを挿入することもできる(Macだととてもきれいに表示されたのだが,試しに同じファイルをWindowsで開いてみたらおぞましいガビガビの画像になっていた.OSの質の差か...).

で,入稿後,結局「図表はフォントの統一性などもあり,こちらでもう一度作らせていただくかもしれません」というメールが来たりするのだけど... まあ,もちろんありがたいんですけど,本当はこの辺は前もって細かく打ち合わせた方がいいのかもしれない(そういう立場にないので,何ともできないのだけれど).

2010年11月8日月曜日

PACLIC 24

2ヶ月くらい様々な事情で更新をしていなかったので,リアルで接触のない人にはついに逝ったかと思われているかもしれない.一応まだしぶとく生きています.

9月,10月と色々なことがあった気がするけど,いざ振り返ると10日ほど前の10月末にタイトなスケジュールの中無理矢理温泉に行ったことくらいしか思い出せない.大したことではないが,前回の熱川のように渋滞に巻き込まれる失敗はするまいと,奥さんの住む別宅のひたちなか市からスルッと北上していわき市の(なんでどこもかしもひらがなの地名なんだ)いわき湯本温泉に行ってきたのである.

ちょうど台風が直撃していたのだが,前任校で吹雪の中,別のキャンパスまで毎週100kmの道のりを車で往復して教えに行っていたことを考えれば,そよ風みたいなものである.温泉は湯の質も良く,料理もアンコウ鍋や地元名産目光の唐揚げを,地酒の大吟醸と一緒にいただいて,大変満足.帰りは高速ではなく地道を台風で荒れる太平洋を横目に,日立帝国を通過する道のりをゆっくり走ってきて,中々楽しかった.東京に来てから,冬にタイヤをスタッドレスに交換しなくなったので,しばらく雪が降りそうな地域にはいけないのが残念である.ジャッキアップして,自分でせっせとタイヤ交換していたのが懐かしい.

そして先週末は東北大学でPACLIC 24であった.私はプログラム委員長ということで,主な仕事は学会前に終わっていて,当日はゆっくり楽しもうという魂胆だったのだが,まあなんだかんだで色々忙しかった.とりあえず表面上は大きなトラブルもなく,無事終わったので一安心である.裏方で東北大の大学院生の皆さんがよく動いてくれて,とても助かった.アジアからの留学生もたくさんいて,雰囲気も良く,てきぱき働くのを見て,中々微笑ましいものがあった.もう少しゆっくり皆さんと話す時間があれば良かったのだけど.

役割上,学会前に発表者と色々やり取りすることがあり,実際それらの人たちと直接会って,話すことができたのはとても楽しかった.元々イギリスにいるときから,この手のことはよくやっていたのだけど,帰国後しばらく孤立した環境にいたので,再び学会運営を通じて様々な研究者と交流を持てるようになったのは喜ばしいことである.あと,東北大で研究員をやっているイギリス人が,お互い院生時代に何度か学会で顔を合わせていた人で(彼は当時オランダの大学にいたのだが),実に7, 8年ぶりに再会できてとても懐かしかった.シンガポールでしばらくポスドクをやった後,東北大でもう1回ポスドクをして,今は研究員ということだけれど,相変わらず私には全然ついていけないゴリゴリのformal semanticsで,思わずニンマリしてしまった.

あとは余談としては,韓国からきた人に,ホテルのテレビをつけるとよく早稲田の野球選手が出ているけどなんでなの?と聞かれたり(斎藤君のことだろう),香港から来た人に,村上春樹本に載っていた観光コースに従って早稲田大学界隈を歩いたと言われたり,研究とは別の意味で早稲田の影響力を実感したりして.

11月はあと日本英語学会も日本言語学会もあるし,割と色々なところに出没することになりそう.気づけば休日が1日もない月だけれど,まあカレンダー上は休みの週末も休むことは稀なので,あまり変わらないのかも.

2010年9月10日金曜日

iPad出張

前回のブログでイギリスに出張中にも細々とした仕事をしていたと書いたが,今回は実はMacBookは持って行っていない.ロンドンで滞在するホテルでも,リーズに向かう電車の中でも,学会会場のCollegeでもwifiが使えることが分かっていたので,iPadとリュウドの折りたたみキーボード,写真取り込み用のiPad Camera Connection Kit,それにiPadをプロジェクタにつなぐDock Connectorだけで済ますことにしたのである.

リュウドのキーボードは中々秀逸なもので,軽量かつコンパクトで,bluetoothで簡単にiPadとつながるので,大変使い勝手が良い.簡単な文書なら,もちろんタッチパネルキーボードで充分なのだが,仕事上ちょっとした長文のメールを書く必要があるときなんかは,こいつを取り出してぱたぱた入力すると,とても快適である.普段使い慣れた英語配列というのもありがたい.以下のような感じで専用ケースもついている.
iPadはノートPCと違い常時起動しているので必要なときに即使うことができる,且つバッテリーの持ちが良い(10時間)ということで,出張先で細々した仕事をするには,本当に役に立った.iAnnotate PDFでPDF原稿の校正もできるし,飛行機の中で論文が読めるのもうれしい.ただ,空港のセキュリティチェックで鞄から出さなくても良いとの謳い文句であったが,Heathrowでは「iPadが入っている」という言うと,「出してくれ」と言われた(成田では何も聞かれなかったので,鞄に入れたまま通して問題がなかった).

一点戸惑ったのは,メールでファイルを添付したいときである.iPadやiPhone/iPod touchの標準のメーラーは,そもそもファイル添付機能がないので,書類等をメールで送るとき困る.SafariでGmailにアクセスしても添付はできない.そもそも標準のiPadの仕様では,可視的なディレクトリでファイルを管理するようになっていないので,ちょっと不便である.解決策としては,Dropboxのアプリを入れておいて,必要な書類はすべてそこに保存しておく(私の場合,普段からそうしているので問題ない).いざ添付ファイルとしてメールで送るときは,wifi環境下でGoodReaderからConnect to ServersでDropboxにアクセスして,ファイルを取ってきて,Manage FilesからE-mailを選ぶと,添付ファイルとして送ることができる.この辺りの手順は知らないと途方に暮れるかもしれない(Air Sharing HDを使っても良いようだ).

プレゼンにiPadを使う場合,Dock Connectorでプロジェクタにつなぐことになるが,これは単に画面を出力するわけではないので,アプリが対応している必要がある.私の場合,LaTeXのBeamerでPDFのスライドを作るので,PDF Presenterというアプリを使っている.CloudReadersでも可能なのだが,割と落ちることがあるのであまり使いたくない.PDF Presenterは,映写しているスライドの前後のスライドを見ることができるのもありがたい.

問題は,iPadでLaTeXをコンパイルすることが現状ではできないため,直前にちょっとスライドを変更というようなことが不可能というのがある.出発前にすべて完成させておかないといけないのである.「飛行機の中で,最後の仕上げをしよ♪」とか「発表は3日目だから,学会中ホテルで完成させよう☆」とかいうことができないのが,いろんな仕事で忙殺されて事前に充分な準備時間が確保できない人にはちょっと辛い.Keynoteを使っている人は,iPadにもアプリがあるので可能だと思うが,私はLaTeX以外でスライドを作るのはちょっと難しいので,悩ましいところである.誰かがiPadでLaTeXを動かせるようにしてくれることを切に願う(TeXShop for iPadなんて,誰か作ってないのかな.10,000円でも買うけど).

2010年9月9日木曜日

LAGB2010

9月初めにイギリス言語学会(Linguistics Association of the Great Britain; LAGB)がリーズ大学で開催され,ふらっと発表しに行ってきた.出発前も学会中も細々とした仕事があって,ぱちぱちとメールを書いたりして,多少落ち着かない感じはあったけれど,学会自体はとても楽しかった.

最後にLAGBで発表したのは,2005年のケンブリッジ大学のときだから実に5年振りの参加である.ちなみにMAのときの生まれて初めての学会発表もLAGBで,今は亡きマンチェスター工科大学(University of Manchester Institute of Technology; UMIST)で行われた2002年秋季大会であった(当時は春と秋,年2回開催されていた).その次の2003年春季のシェフィールド大学でも発表したので,ある意味大学院の研究の進捗の目安のとしてLAGBで発表してきたとも言える.もう1つの目安は国際LFG学会で,こちらは2003年米国ニューヨーク州のSUNY, 2004年ニュージーランドのカンタベリー大学,2005年ノルウェーのベルゲン大学で発表して,それ以来ご無沙汰である(要は日本に帰国後,早稲田に移るまであまり発表してこなかったということか...).

今回は,初日にHenry Sweet LectureとしてMax Planckの大物Stephen Levinson,最終日にLinguistics Association Lectureとしてこれまた大物のJoan Bybeeの招聘講演があったので,うきうきである.Levinsonのトークは,言語のinfrastructureについてで,cultural productとしての言語という観点から,類型論的,進化論的な議論を展開していて,大変面白かった.同日のワークショップでも同じくMax PlanckのNick Enfieldが同種のトークをしていて,こちらも中々良かった.Bybeeの方は,exemplar-based model (Usage-based model) として彼女が昔から主張している,言語使用における各表出形式のトークンの頻度の重要性や使用状況とペアにした記憶のメカニズムなどを,実例とともに丁寧に議論していた.どちらは所謂機能主義的な立場からの話だったので,チョムスキー派の人々にはあまり楽しくないトークだったかもしれないが(後からパブで聞いたところによると,UCLの某H v K氏は相当不満だったようである),広い意味での認知科学的なアプローチとして,とても興味深い話で勉強になった.来年はMark BakerがHenry Sweet Lecturerの予定ということなので,チョムスキーな人たちは来年楽しめば良いのではないだろうか.


学会も無事終わり,割と古くからの仲になるSurrey Morphology Group (SMG)の2人とナイロビでフィールドワークをしているSILの人と,タクシーに乗り駅前に行き,パブで飲んで,街をちょっとぶらぶらして,一緒に電車でロンドンに戻った.

ロンドンではEuston Squareの横のホテルに止まっていたのだが,翌日空港に向かうため地下鉄に乗ろうとすると,イギリス日曜名物engineering workでCircle LineとHammersmith & City Lineが動いてなくて,結局Victoria Lineで南に下って,Oxford CircusでBakerloo Lineに乗り換えて再度北上してPaddingtonに行く羽目になった.何のためにEuston Squareにホテルをとったのか分からないが,まあイギリスらしいと言えば,そうである.

空港に向かうHeathrow Expressの中では,アンケートに協力してくれと言われて,色々質問に答えた.「いつも思うけどたった15分の道のりで片道18ポンドはねぇだろ.高ぇよ.学生時代は絶対乗らなかったね.いつもPiccadilly Lineで行ってたよ」と言いたいところだったが,最近の円高でなんとなくお得感もあったので,細かい質問に答えた後,
まあfastでgoodなサービスなんじゃない,と無難な全体の感想を述べておいた.

帰国して,BBCを見てみるとtubeのストライキのニュースをやっていた.まあ,これに巻き込まれなかっただけでも幸運だったと言えるかな.さすがイギリス(まあこういうところが案外好きだったりするのだけど...).

2010年8月20日金曜日

モルツ・ザ・ビター

バタバタしているうちにお盆も終わってしまった.去年同様,大阪にある奥さんの実家に行っていたのだが,一時期は「もうだめか」と思われた犬が,目を疑うような復活を遂げていて驚いた.依然として色々健康上の問題はあるが,雑種というのは強いもんである.大阪では,特に目立ったこともせず(昨年末のように義父と浴びるように酒を飲んで記憶をなくすこともなく),ぼーっと3日間過ごして,東京に戻ってきた.

それにしても連日正気の沙汰とは思えない酷暑である.私は気楽な服装で,冷房の効いた室内に籠って仕事をしていればいいので,とても恵まれていると思うが,ネクタイを締めてスーツの上も着て,炎天下の中,営業などに回っている人を見ると本当に同情する.ああいう恰好で来られると顧客も見ているだけで暑く感じると思うのだが,半袖にノーネクタイかニットタイではいけないのだろうか.あれではまるで我慢大会のようである.帰宅時の電車も結構悲劇的な匂いが漂っているし.

そんな暑いときにはビールである.新しいビールが出ていると飲んでみることにしているので,先日やまやで見つけたモルツ・ザ・ビターを買ってみた.どうもこのモルツはイオン系の店でしか売っていないようで,昨年も限定発売されていたそうな.最近はプレミアムモルツは好調なようだが,普通のモルツの方はぱっとしない.昔は,居酒屋なんかでもモルツの生を出す店がもっとあったように思うが,近頃はあまり見ない.よく考えてみれば,和久井映見が「うまいんだな,これが」とCMしていたのは,もう15年近くも前である.私は,モルツはちょっと薄いというか水っぽい感はあるが,味は割と好きなので,このビターも楽しみにして飲んでみたところ,期待通り中々良い.サッポロのエーデルピルスとまではいかないが,こういう苦味がガッツリくるビールは好感が持てる.限定発売とか言わず,ずっと売って欲しいものである.

2010年8月18日水曜日

真鯛

先週は大学も一斉休業期間であった.去年は研究室が古い建物で工事をしていたせいか,休業期間は1週間停電断水で大学に来ることはなかったのだが,今年は一応研究室も使用できた(不便であるのに変わりはないが).一斉休業前は,今年はオープンキャンパスの模擬講義担当だったので,40分ほど認知科学としての言語学と言語類型論を絡めた話をしてきた.果たして法学部を志望している高校生に,どの程度面白さが伝わったかは分からないが,まあ現在の私だとあんなところだろう(終わった後,質問に来てくれた学生がいたのはうれしかったが).

こういう機会があると,一般向けに言語学を紹介する試みにはどういうものがあるのか気になるもので,研究室の本棚をぼんやり眺めていたのだが,実のところあまり一般向けの良い言語学の本というのはないのではないかという気がする.ネット配信されている映像でも,Steven PinkerのTED talk(すっかりLFGから離れてしまって寂しい)や以前このブログでも紹介したChristine KenneallyのAuthors@Googleのtalkなんかも改めて観てみたが,やはりちょっと一般向けと言うにはテクニカルだし高度である.書籍では,PinkerのLanguage Instinctはよく勧められているが,あれも予備知識なしで読むにはハードルが高いようだ(イギリスでTAをしているとき,学部1年生に勧めたら,意欲的な学生数人から質問の嵐を受けた).ということで見ていくと,Mark BakerのThe Atoms of Language(郡司隆男訳『言語のレシピ』岩波書店)が一番ましかもしれない.化学とのアナロジーに若干無理があるし,P&Pのパラメータを強調している辺りが不満だけれど,その辺のテイストを薄めると,認知科学的な言語類型論という視点で中々秀逸である.他には専門書ではあるけれど,Daniela Isac & Charles ReissのI-Languageも議論のもっていき方がうまいので,結構参考になる.

オープンキャンパス後は,茨城の別宅に行っていた.ROCK IN JAPANという夏フェスが近所の海浜公園で開催されていたようだが,特に混乱もなく平穏な日々であった.せっかくだから,近所の港に行って,前にもこのブログで取り上げた店で,晩ご飯を食べたのだが,いつもにも増してコストパフォーマンスが高い食事であった.今までは,港なのでついつい刺身のような新鮮さ命の料理を注文していたのだが,今回は焼き魚定食を頼んだら,真鯛が2匹ものったものが出てきた.程良い塩加減,焼き具合で絶品であった.今度は煮魚定食を頼んでみようと思う.

2010年8月3日火曜日

映画の日

もう8月になってしまった.学会運営関係の仕事が一段落し,春学期の成績も全部出して,やっと自分の研究に目が向けられるかな,というところである(6日のオープンキャンパスで高校生の前で言語学の模擬講義をする,という業務が残っているが).

8月は映画の日である1日が日曜日で,奥さんが茨城の別宅に帰る前に有楽町・銀座で映画を観ることにした.2人とも週末に自宅でやらなければならない仕事があったのに,こういう計画を立てて,その後酷い目に遭うのだが,まあこういう無理矢理の息抜きも必要である.

特に目ぼしい映画もなかったので『ソルト』を観ることにする.夏休み・日曜日・映画の日・公開2日目という好条件が重なったせいか,丸の内ピカデリーは満席の盛況ぶりであった.内容は,頭を空っぽにして大画面でアクションを観るにはちょうど良い感じ.話的には,同じスパイもののボーンシリーズの方が面白いと思うけど,観てがっかりするようなものでもない.アンジェリーナ・ジョリーも「らしくて」良かったのでは.

そういえば,奥さんの誕生日がそろそろなので,何か欲しいものはないか聞いてみると,今絶賛はまっているモンティ・パイソンのDVD-Boxを所望された.まずAmazon JPで調べてみると,結構高くて25,000円くらいする.どうも『空飛ぶモンティ・パイソン』は,日本語吹き替えが山田康雄なんかがやっていて,ある種プレミアになっているようである.我々は別に日本語吹き替えなんていらないし,英語でそのまま観た方が遥かに楽しめるので,Amazon UKで調べてみると同じ8枚セット1,327分のものがたった13ポンド(1,800円弱)であった.もちろんこちらを注文した.イギリスからの郵送は結構早いので,数日中には到着するようである.私も楽しみだ.

モンティ・パイソンは古典とも言えるけれど,現代でもイギリスのコメディというのは,ウィットに富んでいて本当に面白い.私が住んでいたときはThe Officeが大人気だった.私はCouplingが大好きで,帰国後また無性に見たくなってDVDセットを注文した.Dead Ringersなんかも,よくテレビで観たものである.コメディに限らず,Top GearGrand Designsや各種料理番組など,イギリスのテレビ番組はとても面白いので,字幕や吹き替えなんてつけなくてもいいから,いつかCATVやネットで日本でも気軽に見られるようなシステムが整備されて欲しいものである.

2010年7月29日木曜日

エグザム

相変わらず多忙のため更新頻度が低い状態であるが,学期も終わり,いくつかの仕事も片付いて,なんとか山を越えた感じである.物理的な忙しさもさることながら,精神的に気を使う業務が多くて結構気分的にぐったりしてしまった.夏の間にやりたい研究も色々あるので,あんまりのんびりしている場合でもないのだが,まあ少しはよかろうということで,取りあえず映画を観に行くことにした.

調べてみると,シアターNでナイトショーでやっているイギリス映画『エグザム』(原題:Exam.なぜ『イグザム』にしないのだろう)が面白そうだったので,さっさと仕事を片付けて渋谷へ.9時上映なので,7時半くらいにチケットを買って,しばらく街中をうろうろする.まず先日不正請求に気づかせてくれたApple Store渋谷へ.昨日Twitterで,品薄のiPad Camera Connector KitがApple Store銀座と渋谷に大量入荷しているとTLで流れていたので,期待して見に行ったのだが,やはりすでに売り切れであった.残念.あとはパルコ,ハンズ,ロフトをぶらぶらを見て時間を潰す(グレゴリーのショルダーバッグで面白いのがあったが,自動車税を払ったばかりで,心理的な浪費感があったので買わなかった).

上映20分前に劇場に戻ると,ロビーは結構な人だかりであった.マイナーな映画だとは思うが,公開しているのがシアターNだけで,水曜日は1,000円デーなので,この手の映画が好きな人たちが集まったのだろう.結局立ち見まで出ていた(私は13年前『普通じゃない』を梅田OS劇場で立ち見で観て辛い思いをして以来,絶対に着座じゃないと映画は観ないことにしている).本編前に,和製ホラー映画の宣伝が流れて,暗い団地で顔が変形した人が追いかけてきたり,便器から長髪の女性が飛び出してきたりして,本当に怖かった.ああいう人を選ぶ映画の広告を半ば強制的に見せるのはやめて欲しいと切実に願う.

肝心の内容は映画の性格上あまりネタバレしない方がいいので大まかに言うと,設定はとても面白いので,あとは登場人物のやりとりとオチが命だと思うのだが,序盤でちょっとダレて,中盤盛り返して,一番期待したエンディングで「うーん,もう一歩」という感じであった.イギリス映画なんだし,もう少しシュールで小気味いい笑いがあってもいいと思うのだが,それがほとんどなかったのが残念.エンディングも落しどころが難しかったのかもしれないけど,ありがち感が強かったなぁ.設定がとても面白いだけに実に残念であった.

ということで,少し消化不良気味なので,次の映画の日(毎月1日)も何か観に行こうと思う.8月の映画の日は日曜日だし,夏休み中で混むかもしれないので,今から物色しておこう.

2010年7月9日金曜日

不正請求

1ヶ月近く更新をしていなかったので,リアルな世界で接触のない人には,死んだか倒れたか,と思われているかもしれないけど,一応生きています.今年度はかなり忙しいのだけれど,特に最近は色々なことが何重にも降りかかってきててんやわんやである.ひと仕事終わって一山越えたなんてこともなく,ずっと山脈である.7月末まではこんな調子だろう.予測はできていたことだけど,事前に対処することができない類のことだったので,あきらめてふらふらになりながらなんとかこなしているところである.

そんな中,予期せずして面倒なことが昨日起こった.きっかけはiPadでプレゼンする用のディスプレイ出力ケーブルをアップルストア渋谷に買いに行ったときである.ちゃんと在庫があり2,980円だったので,いつもならこの程度の金額なら現金で支払うところを,なんとなくカードを使ったのだが,レジのお姉さんに使用不可になっていると言われた.おかしいなと思いながら,その場は別のカードで払ったのだが,気になったので,不可になっているカードの発行元の三井住友カードに電話で問い合わせてみた.すると,返ってきた答えは「お客様のカード利用が限度額の月額100万円を超えています」と.100万???月額???

うちの奥さんがよく冗談で,家族カードで100万くらいの中古車買うわ,と言っているが,いくらなんでもそんな破天荒なことを何の相談もなしにリアルにやるとも思えない.自分でもそんなに使った記憶はないので,担当の人に「何かの間違いでは?」と聞くと,「デンマークで8,847.51ユーロ,99万6千円の支払いが行われています」と... デンマーク???8,847ユーロ???もう大混乱である.

そこでピンと来たのが,Association for Linguistic Typologyへの会費支払いである.この学会費はMouton de Gruyterが発行しているLinguistic Typologyの購読料も含むので,ドイツの代理店のようなところに払うことになっている.で,この代理店のようなところが,ドイツの企業とは思えないくらいしょぼくて,セキュアなオンライン支払いのシステムを持っていない.しょうがないので,自分でクレジットカード情報をパスワードロックをかけて,電子的に送ったのだが,所詮素人のロックなので,通信過程のどこかで情報が抜き取られて,簡単に解除されて見事に不正請求に使われたのだと思う.ひょっとしたら,代理店が間違った額をうっかり請求してしまったのかもしれないと思って問い合わせてみたが,答えはそんな請求はしていない,とのことだった.

幸い,三井住友カードの担当の方は適切に対応してくれて,今朝正式に請求が上がってきた段階で連絡をくれて,すぐに支払い拒否の手続きを取って,今後のためにカードも停止してくれた.請求元は,デンマークのネットで中古車を販売するサイトだったそうな(ちなみに,うちの奥さんがデンマークで中古車を買ったわけではない).

本当に精神衛生上よろしくない出来事であった.もちろん私が軽率だったのは確かだし,これからは面倒だが電話でやりとりしようと思うが,Moutonも立派な国際的出版社なんだから,もう少し金銭取引をちゃんとオンラインでセキュアにできる代理店を使って欲しいものである.くしくも今日こんなニュースを見て,全世界で同じような目に遭っている人はどれくらいいるんだろう,と思ってしまった.忙しいときに限って,こういうことが起こるからたまったものではない.

2010年6月14日月曜日

33

ほぼ放置状態だったこのブログだけど,書くことはないこともないけど,わざわざ書くだけの暇もない,という状態であった.そうこうしているうちに,昨日6月13日の誕生日がきて,33という見た目の切りが良い年齢になった.鏡を見て髪をそっと上げると白髪が急に増えていた気がしたが,まあそういう年齢である(そっと上げると毛根が消滅しているよりは良いだろう).

誕生日は,うちの奥さんも色々仕事が詰まっている中,別宅から帰ってきてくれたので(本人曰く,おいしいご飯とケーキを食べるためとのことだが),丸の内のつばめKITCHENでたらふくドイツ料理を食べ,その下の丸善で本を物色して過ごした(この辺りが職業病に犯された夫婦である).

ちょっと前,その丸善で以前から気になっていた『数学ガール』シリーズを買って,今読んでいるけれど,中々面白い.私の通っていた中学高校は変態的に数学ができる人間が結構いたので(中1の5月でもう高校数学をバリバリやっているやつがいた),「ああ,あいつらはこんな感じで数学を見ていたのかもなぁ」と今更ながら身近にいた秀才たちを思い出している.

今日は,シンガポールから来客があったのだが,少し寝坊して(深夜仕事をしていたらいつの間にか気を失っていた),時間ぎりぎりで駅に行ったら,人身事故で電車がまともに動いていないという事態に見舞われ,なんとも苦いスタートであった.幸い,同僚の先生に急遽お願いして対応をしていただいて,私は後から合流する形で事なきを得たけれど,やはり時間的余裕を持って行動しないと,こういうことになってしまう.少し生活サイクルを見直さないといけないかもしれない.

と,なんだか良く分からない感じで,33年目のスタートである.

2010年5月29日土曜日

iPad到着

日本中の人がブログに書いている話題とは思うが,我が家にも発売日の5/28にiPad (wi-fi 64GBモデル) が到着した.普段金曜日は午後6時に授業が終わった後,週末に持ち込みたくない細々とした仕事をダラダラと片付けてから帰宅するのだが,昨日は午前中にクロネコさんから不在配達通知がメールで来て,ウェブで午後8時から9時の間に再配達に来てもらうようお願いしてあったので,さっさと大学を出て,急いで夕飯の買い物をして,帰宅した.ドアに挟んであった不在配達通知票に,配達の人が「品名: iPad?」と書いていたのが可笑しかった(外箱からは分からないけど,同じiPadの配達が結構多いのだろう).我が家はクロネコの集配センターのすぐ近くなので,帰宅後ほどなくして持ってきてくれた.

実は特に発売を心待ちにしていたというほどでもないので(でかいiPod touchくらいに思っていた),土曜日に再配達してもらってもよかったのだが,ニュースで銀座のアップルストアに行列とか,Twitterで手に入れた人の感想なんかを読んでると,何か当日手にしないと損した気がするというミーハーな感情がむくむくと沸き上がってきたのである.そして実際手にしてみると,これは・・・.

いやぁ,結構衝撃的だった.初代iMacを触った時も,はんぺんiBook G3でOS Xを動かした時も,iPod touchを初めて使った時もAppleの革新的な使い心地を感じたけれど,このインパクトは凄い.タッチパネルなんて,それこそ銀行のATMや定食屋の券売機にも導入されていて,普段から触れているものだけれど,だからこそこのiPadのレスポンスの心地良さが実感できる気がする.Safariもさくさく動くし,メールもカレンダーもiPod touchとは桁違いの使いやすさである.

iPadの最大の売りの1つである電子書籍も,iBooksやi文庫HDで使った限りでは,pdfも含めすこぶる快適に読むことができた.仕事上のとある事情で2年ほど前,当時米国で本格的に売り出し始めたKindleやその他の電子書籍リーダーをかなり詳しく調べたことがあるのだが,それらと比較しても,タッチパネル同様既存のインターフェイスをまるで新たな体験のように感じさせる使い心地の良さには唸るしかない.
一緒に専用ケースを注文していたので,角度をつけてソフトウェアキーボードの使い心地も試したのだが,こちらは机に置くならもう少し角度が欲しいところである.特にグレア液晶がかなり光を反射するので,真上に照明がある私の自宅リビングのような環境では,結局膝の上に置いて使わないと画面が見にくい.ソフトウェアキーボード自体の使い心地は中々良好である.これで論文を書こうとは思わないが,メールくらいなら今後MacBookを使う必要もないくらいである.

今後どの程度iPadや似たようなデバイスが広まるかは分からないが,少なくとも電子書籍はかなりの勢いで普及するだろう.学術書出版業界は,いつの時代も採算が厳しいと言われているが,だからこそぜひ学術書の電子書籍化に積極的に取り組んで欲しい.大学生協書店がインフラを提供して,各学術出版社が電子書籍を生協のサイトを通じて提供し,研究者が簡単に研究費で決済できるなんていう仕組みをなるべく早く確立していただきたいと思う.

大学の講義も,このような端末がノートのように普及すれば,いちいちハンドアウトをコピーして講義室で配布するなんてことはしないで済むかもしれない.今でも当然講義資料は電子ファイルで利用出来るようにはしているが,やはり講義のはじめに「今からこれをダウンロードしてね」なんて指示することはまだ現状では不可能である.実現すれば印刷と配布の手間も省けてとても楽だし,紙とトナーの節約にもなるだろう.

2010年5月25日火曜日

横浜

なんだかポカポカ陽気の春なんてちっともなく,異常な寒さの後はうだるような暑さと梅雨のようなじめじめした気候が交互にやってきているような気がする.忌々しい.

今日は比較的好天気だったので,2コマ授業をした後,図書館で論文をコピーし本を借り,研究室に戻る途中に生協の本屋でお茶の水大学の戸次大介さんがお書きになった『日本語文法の形式理論』を購入した.理論系と情報系のバランスがうまく取れていて,かつ細かくデータを扱っていて,とても面白そう.ぼちぼち読みたいと思う.

昨日は生憎の悪天候だったけれど,研究打ち合わせで横浜の新社屋に移転した富士ゼロックスにお邪魔してきた(これを書きながらふと思い出したが,私の学部時代の同級生が富士ゼロックスに入社していたはずだが,彼女は社内でどういう仕事をしているのだろう).皆さんとても優秀な方々なので,打ち合わせは面白くて,今後どういう方向に進めていこうかと考えるだけでも楽しみである.

打ち合わせ終了後,みなとみらいに夕食に繰り出す前に,博物館のように色々展示物があるロビーをうろうろしていたのだが,そこにPARC(Palo Alto Research Center, ついCentreと書きそうになる)の1973年のコンピュータが展示してあった.適当に写真を撮ってしまったので,ピンぼけで変な構図になっているけれど,とても存在感がある. これは40年近く前のものだが,今のテクノロジーの産物で,40年後にこうして展示するような「モノ」はあるのだろうか,とふと考えてしまった.iPad? 3DのTV? 展示物としてはいまいちピンとこない.革新的な技術がモノではなくなっているからかもしれない.Googleの検索サイト公開の瞬間とか,展示できないし.

くしくも,富士ゼロックスの社屋に行く途中,日産の豪勢なビルを通ったが,軽自動車が展示してあって,そのギャップにちょっとのけぞってしまった.ディーラーじゃないんだから,歴代のGT-RとZをすべて展示して欲しいなぁ.日産の誇るべきものは,そこにあるんじゃないのかしら.

それにしても,横浜って神戸みたいなもんだろうと思っていたけど,全然違うのね.横浜はピカピカ,ギラギラ未来都市の雰囲気で結構インパクトがあった.震災復興後も元々のこじんまりした佇まいのある神戸とは,同じ港町でも随分と違うもんだ.どちらが好みかはあえて言わないけど.
 
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