2009年9月30日水曜日

講義開始

あっという間に9月も終わってしまう.東南アジア,太平洋地域はフィリピンは台風に襲われ,サモアが大地震,その後スマトラで大地震と,なんともことばを失ってしまうような事態だなぁ.「自然って怖いね」くらいしか思いつかない.前のスマトラ沖地震のときのように募金くらいはしたいと思うが,やるせない気分になる.

イギリスに住んでいるときは「この国は本当に自然災害がなくて,うらやましいなぁ」と感じたもんだが(大地震起こらない,台風こない,山火事めったにない,豪雨もまずない,水不足にもならない,大雪降らない,などなど),その代わりちょっと風が吹くと電線が切れたり,気温が30度を超えると鉄道のレールが歪んだり,という事態はよく目にした.人災だよな,あれは.

大学の方は,昨日から私も午後に3コマ講義があったけれど,2ヶ月ぶりに教壇に立ったので,ぐったりしてしまった.導入だから,大したことしてないんだけれど,人前に立って大声で270分しゃべるというのは,それなりに体力を使う.初回の講義というのは,学生側もどことなく緊張していて,講義室内の雰囲気も少しピリっとしているのだが,これから緩い感じにしていきたいところである.

唯一日本語で講義する言語学(形態統語論)は,予想に反して25人も登録者がいて嬉しい限り.ただ5限という時間でもあるし,面白くない講義だと減ってしまいそうなので,興味を持ってもらえるように工夫してやっていかなければならない.1人1人に話してもらったところ,ほとんどが初めて言語学に触れるようではあるが,皆さん考え方や受講姿勢がしっかりしていて,驚くことしきりである.

2009年9月28日月曜日

スカイタワー西東京

今日から秋学期開始.新型インフルなどの懸念要素はあるけれど,キャンパスは学生が戻ってきて,活気がある.もっとも私は月曜日は講義も会議もないので,一日研究室で仕事をしていただけだが.

昨日,万城目学の『プリンセス・トヨトミ』について書いたが,その中に通天閣のネオンの光は気象台と連動していて,翌日の天気によって色が変わるという記述がある.このことは割と大阪人は知っていると思うのだが,そこでふと私の自宅から500メートルほどのところにあるスカイタワー西東京(通称田無タワー)のことが思い浮かんだ.

この辺りは,東京といってもそれほど高層ビルがないので,日本で6番目の高さだというこのタワーは結構目立つのだが,その高さだけでなく,夜はいつも紫やら青やらに光っていてド派手という特徴もある.単に飛行機がぶつからないように光っているのかと思っていたのだが,『プリンセス・・・』を読んでひょっとしてあのネオンも翌日の天気なのでは,と思って調べてみた.当たりである.

さっき11時過ぎに帰宅したときに,玄関前で撮影したら黄緑色に光っていたので,明日は曇りということか.今の時代,天気なんてネットですぐに分かるのだけど,帰宅時に必ず目にはいるので,便利と言えば便利である.

ウィキペディアの日本の塔の一覧を見ると,私は結構色々な塔を見たことがあることに気付く(名古屋テレビ塔は高校時代の同級生と階段で上まで登ったことがある.高所恐怖症なのに・・・).でも,塔の魅力って高さじゃないな.神戸ポートタワーなんて,この表でいくとあまり高くないけど,ハーバーランドというロケーションと,近くにあるホテルオークラやオリエンタルホテルのライティングとの相乗効果で,夜はずっと眺めていたいほどきらびやかである.東寺の五重の塔も,実家から京都駅に向かうときに,国道1号線から九条で曲がると目の前に現れて,そのあまりの存在感と美しさにいつもハッとしたものである.

2009年9月27日日曜日

新学期

随分更新をさぼっていた(過去最長?).予想通りシルバーウィークは,ずぅっと籠もって仕事,最終日の水曜に至っては丸一日会議という有様(翌木曜日も丸一日会議).ちなみに秋分の日はキャンパス内で大学周辺の商店街が主催の「早稲田地球感謝祭」なるものが開催されていて,4万人も入場者があったとか.どおりで会議室にまでガンガン騒音が聞こえてくるはずだ(まあ祭りだからいいのだけど.祝日に会議してる方が悪いわな).焼き秋刀魚,焼き鳥に早稲田地ビールかぁ.飲み食いしたかったなぁ.

そんなかんなで心がすさんできたので,やることは山のように天高く積み上がっていたけれど,ふらっとメトロ早稲田駅横の成文堂書店に入って東野圭吾の『赤い指』の文庫と万城目学の『プリンセス・トヨトミ』を買った.『赤い指』は加賀恭一郎シリーズらしい話で,さらっと楽しく読めた.『プリンセス・・・』は,まだ読んでいる途中.小ネタ的にはホルモーシリーズの方が面白いけど,中々大作っぽくてこういうのも中々良い.しかし,ホルモーもこれも,関西の土地勘がない人は読んでて分かるのかな.私は京都も大阪もホームグラウンドだったので,地名が出るとぱっと情景が浮かんで,すっと世界が入ってくるのだけど.

さて,明日から大学は秋学期開始である.学期前にしてすでに疲弊しきっている感もあるけど,受講者諸君の積極性を期待して,ぼちぼちやっていこう.

P.S.(?) プレミアムモルツでクリスタルグラスが当たるというので,普段のエビスではなく,こちらを買って点数を集めてネットで抽選したら,当たってしまった.届いたらまたアップしよう.今年は結構色々当たるなぁ.ローソンでコレも当たったし(中々良くて活用している),出張先で夜飲むビールを買ったサンクスでコレも当たった(暇だったからホテルの部屋でiPod touchから応募した.こんなのいらなかった).

2009年9月15日火曜日

秋刀魚

もう9月も折り返し地点である.気がつけば,もう半袖では肌寒く,研究室のエアコンも不要になる季節になっている.北海道産の秋刀魚を肴に一杯やるというのがこの季節の小確幸.

先週後半は慶應SFCで日本認知科学会が開催された.私は結局興味のある発表があった初日だけ参加したのだが(SFCって微妙に遠いから,よっぽど聞きたい発表がないとわざわざ毎日通う気にならなかった),招待講演の神戸大の定延さんは「体験」というものの言語における位置づけを,経験的データを元にユーモアを交えながら発表されていて,とても面白かった.今度ご著書を拝読したいと思う.

今週は教授会を始め諸々の会議があったり,書類を作ってNYのとある知り合いに送ったり,科研費の書類をぼちぼち進めたり(大阪大学理学研究科の山中さんが今回も科研費LaTeXの提供を開始して下さった.ありがたい),頼まれていた論文査読をしたり,慌ただしい.再来週には後期も始まるので,巷で言われているシルバーウィークなんて我々には無縁である.企業の人も決算前で忙しいに違いない.

そんな中,大学に届いていたNew Scientistの特集は中々面白い(イギリスからの国際郵便なので少し前の8月29日号ではあるのだが).特集は次元(dimension)についてで,0次元,1次元,1.5次元,2次元,3次元,4次元,5次元,6次元,8次元,10次元とそれぞれについての話が載っている.知覚を超えたものを考えるというのは,自然科学の神髄である.知覚できるものだけを見ていても深い発見は得られないというのは,言語学にも当てはまる.

2009年9月9日水曜日

労働

ここ数日引き籠もり気味である仕事をしなければならなくて,憂鬱だ.「労働」という感じで,能率が上がらないし,やる気がすぐなくなる.こういう時,私は会社勤務なんかには不適合な人間なんだろうなぁ,と改めて思う(子供のときにすでに気付いていたが).

昨日夜中,気分転換に武蔵小金井の方の古本屋に車で行ってきた.割と古い雑誌やら新書が充実しているところで,進化論を特集している『現代思想』の1987年6月号を見つけた.大型の古本屋にしては,新書もちゃんと整理番号順に古いものから並んでいて好感が持てる.

森博嗣氏の『君の夢 僕の思考』もあったので,こちらも購入した.以前本屋でパラパラと見たときは,「なんだフォトエッセイか」とあまり買う気が起きなかったのだが,今回読んでみるとひじょうに良い.簡潔な表現に鋭い視点が凝縮された文章にはいつもながら感心させられる.

今の気持ちにぴったりなものをひとつ.
人間は仕事をするために生きているのではない.仕事をしないために生きている.それが,人間だけの目的,幻想だと思う.「働かざる者食うべからず」は低級で危険な現実だ.

実に的確.なぜ多くの人々(日本人?)は労働を美化したがるのだろう.一種のマゾヒズムだろうか.努力と労働を混同している人もひじょうに多いし.

2009年9月2日水曜日

科研費

ジャワ島は大地震に見舞われ,メキシコはハリケーンに襲われ,ロサンゼルスは山火事の恐怖にさらせれている.何とも不穏なニュースばかり.

昨日科研費について書いたが,大学の研究推進部から今年度の変更点についてメールが来た.学振のウェブサイトにもアップされているので,詳細はコチラを参照.

まず第一に若手研究に受給回数制限が設けられ,最大2回までしか受給できないことになったとのこと.私は年齢的にはまだしばらく若手かと思っていたが,すでに1回通っているので,あと1回しか出せないということになる.若手は39歳まで応募できるが,すでに2回採択された人は,その後は年齢に関係なく基盤に出せ,ということだろう.まあ若手研究の設置趣旨からすると妥当な変更だろう.

二点目として研究計画書に「研究概要」という欄が追加されるらしい.従来の「研究目的」,「研究計画・方法」の量が多少削られているのか,まだ計画書のファイルをチェックしていないので分からないけど,ちょっと手間が増えるかもしれない.

三点目は,以前から知らされていたけれど,電子申請の認証が府省共通研究管理開発システム(e-Rad)に一括されたとのこと.確か今年度初めにe-Radの登録通知が来ていたけど,e-Radのパスワードは知らない(試しに旧科研費システムのを入力したがだめだった).事務の方に聞いてみないといけない.

あと私には関係ないが,「若手(スタートアップ)」が「研究活動スタート支援(仮称)」と名称が変わり,応募資格も変更されるそうな.その他,細目表に変更があったり,重複応募制限を緩和し若手研究の最終年度前年応募が可能になったり,というのがあるらしい.

一つ気がかりなのは,有志の方が作っていたLaTeXで研究計画を作成するパッケージが今年度も利用できるのだろうか.研究計画書のフォーマットが変更されているので,心配だ.ワードで研究計画書を作成するのは地獄なので,利用できるといいんだけど.

2009年9月1日火曜日

科学理論の価値

あれよこれよとしている間に,もう9月である.後期が始まるまではまだ1ヶ月ほどあるが,9月に入ると会議も増え,講義準備もちゃんとしないといけないので,そわそわしてくる(と言いつつ,毎月1日感謝デーの新宿バルトで映画を見てきたが).

何より秋は科研費の申請について考えないといけない.科研費は大学教員になった2006年に初めて申請して,幸い採択されて研究費をいただいた.それが切れた後,昨年は翌春大学を移ることが分かっていたので申請を見送ったのだが,今年は書類作成の時間を確保して申請したいところである.学振が政権交代で今後どういう影響を受けるのか不明だが,首相になる人が元大学教員で経営工学の研究者なので,悪いようにして欲しくないなぁ(あの人は学者のままでいた方が幸せになれたのではないかと思わないでもない).

先日イヌの進化の話を書いたが,今月のScientific Americanは1冊丸々進化論の特集である.今年はダーウィン生誕200周年,『種の起源』出版150周年ということで,1月号も進化論の特集だったが,今回はOrigins of the Universe, Life, the Mind, Computingを中心として,様々な起源の話が載っている(ポッドキャストのmp3はココ).英語が苦手な人は4ヶ月後には翻訳版の『日経サイエンス』が出るはずので,そちらをご覧になるとよいだろう.

Origins of the Mindといえば,進化心理学(evolutionary psychology)はPinkerあたりの大物でもハードサイエンスの人々にspeculativeだとかpost-hocだとかケチョンケチョンにけなされることが多いけど,同じくScientific AmericanのポッドキャストでLisa DeBruineの進化心理学の真価についての論考が紹介されていた(mp3はココ).彼女の主張は,進化論的視点の真価は,既知の行動に進化論的理由を与えることではなくて,まだ深く研究されていない行動に対して新たな予測を提示することだ,ということ.科学理論における予測可能性の重要さって,今更強調しなくても当たり前のことだと思うんだけど,巷に出てくる目を惹く研究ではこの視点が案外欠けてるのも多いのかもしれないな.言語進化論もこの予測可能性をいかに提示できるか,というのが今後の発展の鍵だろう.
 
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