2010年9月9日木曜日

LAGB2010

9月初めにイギリス言語学会(Linguistics Association of the Great Britain; LAGB)がリーズ大学で開催され,ふらっと発表しに行ってきた.出発前も学会中も細々とした仕事があって,ぱちぱちとメールを書いたりして,多少落ち着かない感じはあったけれど,学会自体はとても楽しかった.

最後にLAGBで発表したのは,2005年のケンブリッジ大学のときだから実に5年振りの参加である.ちなみにMAのときの生まれて初めての学会発表もLAGBで,今は亡きマンチェスター工科大学(University of Manchester Institute of Technology; UMIST)で行われた2002年秋季大会であった(当時は春と秋,年2回開催されていた).その次の2003年春季のシェフィールド大学でも発表したので,ある意味大学院の研究の進捗の目安のとしてLAGBで発表してきたとも言える.もう1つの目安は国際LFG学会で,こちらは2003年米国ニューヨーク州のSUNY, 2004年ニュージーランドのカンタベリー大学,2005年ノルウェーのベルゲン大学で発表して,それ以来ご無沙汰である(要は日本に帰国後,早稲田に移るまであまり発表してこなかったということか...).

今回は,初日にHenry Sweet LectureとしてMax Planckの大物Stephen Levinson,最終日にLinguistics Association Lectureとしてこれまた大物のJoan Bybeeの招聘講演があったので,うきうきである.Levinsonのトークは,言語のinfrastructureについてで,cultural productとしての言語という観点から,類型論的,進化論的な議論を展開していて,大変面白かった.同日のワークショップでも同じくMax PlanckのNick Enfieldが同種のトークをしていて,こちらも中々良かった.Bybeeの方は,exemplar-based model (Usage-based model) として彼女が昔から主張している,言語使用における各表出形式のトークンの頻度の重要性や使用状況とペアにした記憶のメカニズムなどを,実例とともに丁寧に議論していた.どちらは所謂機能主義的な立場からの話だったので,チョムスキー派の人々にはあまり楽しくないトークだったかもしれないが(後からパブで聞いたところによると,UCLの某H v K氏は相当不満だったようである),広い意味での認知科学的なアプローチとして,とても興味深い話で勉強になった.来年はMark BakerがHenry Sweet Lecturerの予定ということなので,チョムスキーな人たちは来年楽しめば良いのではないだろうか.


学会も無事終わり,割と古くからの仲になるSurrey Morphology Group (SMG)の2人とナイロビでフィールドワークをしているSILの人と,タクシーに乗り駅前に行き,パブで飲んで,街をちょっとぶらぶらして,一緒に電車でロンドンに戻った.

ロンドンではEuston Squareの横のホテルに止まっていたのだが,翌日空港に向かうため地下鉄に乗ろうとすると,イギリス日曜名物engineering workでCircle LineとHammersmith & City Lineが動いてなくて,結局Victoria Lineで南に下って,Oxford CircusでBakerloo Lineに乗り換えて再度北上してPaddingtonに行く羽目になった.何のためにEuston Squareにホテルをとったのか分からないが,まあイギリスらしいと言えば,そうである.

空港に向かうHeathrow Expressの中では,アンケートに協力してくれと言われて,色々質問に答えた.「いつも思うけどたった15分の道のりで片道18ポンドはねぇだろ.高ぇよ.学生時代は絶対乗らなかったね.いつもPiccadilly Lineで行ってたよ」と言いたいところだったが,最近の円高でなんとなくお得感もあったので,細かい質問に答えた後,
まあfastでgoodなサービスなんじゃない,と無難な全体の感想を述べておいた.

帰国して,BBCを見てみるとtubeのストライキのニュースをやっていた.まあ,これに巻き込まれなかっただけでも幸運だったと言えるかな.さすがイギリス(まあこういうところが案外好きだったりするのだけど...).
 
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