2009年8月27日木曜日

イヌの進化

昨日車検が終わったとディーラーから連絡があったので,取りに行ってきた.購入3年目ではあるけど,走行距離が5万kmほどいってしまっているので,念のためファンベルト,冷却水,花粉フィルター,ブレーキパッド,ブレーキ液など換えて,エンジンやシャシーのスチーム洗浄もしてもらい,15万円ほどかかってしまった.東京に来てからめっきり乗る機会は少なくなったとはいえ,依然として長距離走行,高速走行をすることがあるので,このくらいの整備費は仕方ないか.せっかく車に乗ったので,少し離れた光が丘の「やまや」に行って,ウィスキー2本(ジェムソンとカナディアンクラブ),ビール1ケース,ディチェコのパスタ1キロ,コロンビアのコーヒー豆1キロ,オリタリアのエクストラヴァージンオリーブオイルを買ってきた.

閑話休題.Richard Dawkinsの新刊The Greatest Show on Earthが9月10日に発売される.それに先行して英国新聞のTimesのウェブサイトが第1章と第2章からの抜粋を掲載している.後者がイヌの進化についての話で中々面白い.

基本的にはRaymond Coppingerという人の説を紹介しているのだが,その骨子は「イヌがオオカミから進化したことはよく知られているけれど,野生のオオカミからヒトに飼い慣らされたイヌまでの進化はすべて人工的な淘汰(artificial selection)によるものではなく,自然淘汰(natural selection)によるものも大きい」というものである.つまりヒトが飼い慣らす前段階でオオカミは自然淘汰によってvillage dogと呼べるようなイヌ的なものになっていたというものである.

その証拠として挙げられているのは,人工的に変化させられた家畜化されたり飼い慣らされた動物は,数世代野生に放つと元の形質に戻ってしまうらしいのだが,イヌを野生に放ってもオオカミにはならず,village dogとかpye-dogと言われるような所謂雑種のようなイヌになるということ(うちの奥さんの実家のイヌの写真を参考として挙げておこう).つまり人工交配による形質変化が行われる前段階ですでにオオカミではなく,雑種のようなイヌであったということである.

なぜオオカミが自然淘汰で雑種のようになったかというと,逃走距離(flight distance)と残飯あさりが関係している可能性があるという.逃走距離というのは,天敵などの危険なものが一定の範囲内に近づくと逃げる目安となる距離で,野生動物は種ごとに遺伝的に決定されるらしい.この距離が短すぎると逃げ遅れて殺されてしまうし,長すぎると天敵がうろついているところでは食料が得ることができず餓死してしまう.そのリスクバランスが最適になり,生存可能性が最大限になるよう,自然淘汰で調整されているわけである.

逃走距離は遺伝的に決定されているが,当然突然変異によってこの距離が長かったり,短かったりする個体が出てくる.ここで鍵となるのが,他のオオカミより逃走距離が短い個体が,ヒトの集落周辺にいた場合である.通常の場面では短い逃走距離は襲われるリスクが高いが,ヒトの集落周辺では残飯が出るため,より集落に近づくことができる個体は食料を得やすいのである.つまり,逃走距離が短い個体の方が,ヒトの集落周辺での環境適応度が高いのである.その結果,自然淘汰により逃走距離が短いオオカミが支配的になっていったのが,オオカミから(人懐っこい)イヌへの進化の第一歩というわけである.

当然の疑問としては,なぜ人懐っこいオオカミはイヌのような見た目になったか,である.これに関しては,以前このブログでも紹介したDawkinsのDVDにも登場する話なのだが,silver foxの話が取り上げられている.ロシアの遺伝学者Dimitri Belyaevという人は,その毛皮が高く取引されるsilver foxを育てるのに,人懐っこい個体を選んで交配を繰り返したという話である.彼が人懐っこさの基準として使ったのが,上述の逃走距離に似たようなもので,silver foxの子供をその人懐っこさによって3つのクラスに分類し,最上位クラスの個体のみを交配して育てるという実験をしたのである.するとたった6世代で,見た目が変容しイヌのようになり,とても人懐っこい個体が増えていった.その割合は10世代後には18%,20世代後には35%,30から35世代後には70-80%がイヌのようになってしまったという.

このような容姿の変化は一見人懐っこさの副次的作用に思えるが,進化論ではこのような「一見」副次的作用に思える特性は,深いところでその引き金になった特性とつながっていることが多いので,人懐っこさとイヌのような外見というのは,根本的に関連している可能性が高い,とのこと(人間が「可愛い」と感じるには,一定の感覚的基準があるので,その辺と関係しているのだろう.ムカデなんてどんなに人懐っこくてもほとんどの人には可愛くなりえないものね).

以上が主な内容.英語ができる方は,私の要約なんかより,コチラのDawkinsの素晴らしい原文を読むことをお勧めします.

2009年8月21日金曜日

月刊『言語』

先日ひつじ書房からの「ひつじメール通信」で知ったのだが,大修館の月刊『言語』が12月号で休刊になるらしい.割と普通の書店でも売っているし,それほど値段も高くないし,大手と言ってよい大修館から出ていたわけだから,突然の知らせで驚きである(研究社の『英語青年』休刊のときも同じ印象を持ったが).

月刊『言語』は,専門書というわけではないが,所謂語学書でもない,割と先端の言語学研究をそこそこ教養のある人なら分かるように提供する良心的な雑誌だったと思うのだが,やはり巷に言語学に興味のある人は少ないということか.鉄道雑誌やカメラ雑誌なんて,かなり高価でもそこそこ売れるらしいから,やはりこの手の雑誌は「マニア」がいないと成り立たないのかもしれない.

『英語青年』休刊のときにも似たようなことを書いたが,休刊になりそうだと分かっていたら,支援の意味で定期購読したのになぁ,という研究者はけっこういるのではないだろうか.こういう雑誌は大学図書館にはほぼ間違いなく所蔵されているので,図書館に行ったついでにぱらぱら見て,興味のある特集が載っているときだけ生協の本屋にでも寄って購入する,という程度の読者は私だけではない気がする.

今月の特集は何かなとチェックしてみたら,裁判ことばの言語学(法言語学)だった.私の同僚の首藤さんも書いておられる.裁判員制度も運用が始まり,最近ひつじ書房からも『裁判とことばのチカラ』も出版されたことだし,この辺を素早くフォローするあたり月刊『言語』らしい.残念だなぁ,休刊.

2009年8月19日水曜日

ワンセグ

先日ネットを徘徊していたらMac対応のUSBワンセグチューナ(PCTV-hiwasa mini)がサマーセールで安売りしていたので,衝動買いしてしまった.余り地上波は見ないので,特に利用価値もないのだけど,何となく気になったのと,テレビのない茨城の別宅で使えるかなと.

昨日徳島から届いたので,早速試してみた.外見はコンパクト,シンプルでMacによく合う感じ.ソフトウェアのOneTVも使いやすい.付属の標準アンテナでは,私の環境ではまったく受信できなかったけど,写真のような感じで部屋のアンテナソケットにつなぐことができ,その場合の感度は良好.付属の延長アンテナも,窓際に置いておくと,同等の受信レベルを示し問題なし.画質は所詮ワンセグなので,こんなもんだろう(Youtubeの標準画質みたいな感じ).

録画予約しておくと,Macがスリープ状態にあっても勝手にOneTVが立ち上がって,録画してくれる.さらにiPhone/iPod touch用に無料で提供されているTV Playerというアプリを使うと,wi-fi経由でその録画した番組をダビングできる.試しに深夜にTokyo MXでやっていた変なアニメを録画してiPod touchに転送してみたけど(Tokyo MXって深夜はあんなのばっかり放送してるのね),転送速度も速く,操作性もひじょうに良い.

Windowsも対応と書いてあったので,試しにMacBookでBoot campを使いWindows XPを立ち上げて視聴してみたけれど,こちらは映像が途切れがちで,ソフトの操作性もいまいち.スペック的には問題ないはずなんだけど,何か相性の問題かもしれないが,これはMac用と考えた方がよいかもしれない.Windows用はバッファローやI-O Dataから色々出ているから,そちらを使った方が吉ではないかと.

地上波はほとんど見ないから,どれくらい使うか分からないけど,中々面白いガジェットではある.NHKも民放も面白い番組やってくれれば,もう少し利用価値も上がるんだけどねぇ・・・.

追記:後日VAIO SZにつないでみたところWindows XPでも普通に見ることができた.それでもソフトウェアは基本的な機能のみだが.

2009年8月17日月曜日

夏休み

先週いっぱい大学は全学休業で,私の研究棟も水道・電気が止まって,利用不可能だったので,茨城の別宅に行き,週末は大阪にある奥さんの実家に里帰りしていた.

さすがにお盆の時期に車で東京から大阪まで帰る気は起きなかったので,新幹線を利用した.行きは品川から乗ったので大して混雑もしていなかったけど,帰りの新大阪はすごい人だかりで辟易した.例の東名崩落で車移動をあきらめて新幹線に切り替えた人もそこそこいたからかもしれない.新大阪はもう少し喫茶店的なものを改札内に作った方がいいのでは・・・.

関西を離れてもう10年以上になるが,生まれてから20年間過ごした場所なので,いまだに大阪や京都に着いて,電車内でのアーシーな会話が耳に入り,街を囲む山並みが見えてくると,落ち着いた気分になる.

奥さんの実家では,家庭菜園というよりほとんど小型農園とも言ってもよい畑があって,取れたての夏野菜が実においしかった(収穫後の様子を撮っておいた).オクラ,獅子唐,満願寺唐辛子,ゴーヤ,キュウリ,トマトなど,こんなに味が違うものか,と感嘆してしまう.

土曜日は特にすることもなかったので,義父が車で裏山(信貴山)にある信貴山寺に連れて行ってくれた.世界一福寅という大型の寅の置物があり,2匹のムカデをあしらった文様がつけられた中々ファンキーな寺社である.聖徳太子が飛鳥時代に「信ずべき貴ぶべき山」と名付けたところが始まりだというから,私がよく遊びに行っていた京都の寺々よりも二時代も前である.

そんなこんなで,割と普通の夏休みを過ごし,今日から通常営業だ,と研究室に行ったのだが,どうやら勘違いしていたようで,通常営業は明日火曜日からだった.まあ普通に研究室は使うことができるので良いのだが,1,2階で大がかりな工事を今週いっぱいやるようで,結構音が五月蠅い.9月に入るまで,こんな感じで落ち着かない状態なのかもしれない.

2009年8月8日土曜日

新宿の夜

昨夜は前任校の同僚と飲みに行った.やっと前期も終わって,単身赴任先の福井から東京に前日に戻ってきたとのこと.最後に会ったのは後期入試のときだったから約5ヶ月振りである.近況報告も含め色々話すことができて楽しい夜であった.

新宿NSビルの29階のとある店で2時間ほど飲み,その後さらに2軒はしご.結局12時前まで飲んでいた.初めの店でビールから始まり,日本酒を結構な量いただき,ワインバーでワイン(赤,白),ショットバーでウィスキー(カナディアンクラブ),カクテル(マルガリータ)を.取りあえず飲みたいものを全部いただいた感じで満足である.

新宿NSビルというのは,中が吹き抜けになっていて,1階ロビーから上を見上げるととても面白い.29階からの眺めも素晴らしい.また機会があれば行ってみよう.隣に都庁もあって,見に行ったけど,あまりにも高すぎて写真を撮る気も起きなかった.フレームに入らないよ,あんなの.

さんざん飲んだにも関わらず,普通に電車で立って帰り(金曜日は遅い時間でも混んでるんだよな),特に二日酔いもなく,今日も大学へ.晴海で東京湾岸花火大会が夜7時からあったようで,高く上がった花火は研究室からも見ることができた.墨田川やら神宮やら東京は花火大会が多いなぁ.

今日は早めの9時過ぎの電車で帰ってきたけど,泥酔した爺さん,婆さん,その娘夫婦,孫2人の団体が私の隣に座って大騒ぎしていて,たいそう迷惑だった.幼児でもないのに,まるで理性のかけらが感じられないほど暴れる子供に,その子供以上にうるさい声で叫んで一緒になって戯れる爺さん.あの手の人々に「社会性」という概念はないんだろうか.あんなのが電車に乗るのが許されるなら,よくしつけられたイヌが乗ってもいいはずだ.

2009年8月6日木曜日

顔の白い黒猫

先日「近所に顔の白い黒猫がいた」と奥さんに報告したら,「それは黒猫とは言わないのでは」と返された.今日また見かけたのだが,実際は顔だけではなくて体の半分くらい白かった.人の記憶とはいい加減なものである.今回はもう1匹一緒にいて,2匹仲良く並んだ車の陰で休んでいた.車下兄弟とでも名付けようか.

福井では草刈りさんや山さんを始め,東尋坊ネコなど,結構頻繁にネコがうろついていて,このブログにもたびたび登場させていた.ここらへんではほとんど見ることがなくさびしかったのだが,車下兄弟は駅への道の途中で徘徊しているので,今後も頻繁に会えるかもしれない.

大学に行くと,アマゾンから2冊本が届いていた.Joan BybeeのFrequency of Use and the Organization of LanguageとJoan Bybee, Revere Perkins, and William PagliucaのThe Evolution of Grammar: Tense, Aspect, and Modality in the Languages of the Worldである.Bybeeの研究って,ちょっと毛色が違うかなと思ってこれまでほとんどカバーしていなかったのだが,使用頻度とレキシコンや語彙項目との関係の議論に少し興味があるので,いい機会だからまとめて読んでみることにしたのである.時間が取れればであるが.

2009年8月5日水曜日

ピン

今日大学の帰りに新宿の東急ハンズに行ったら,JR新宿駅新南口あたりに,写真のようなものを見つけた.そう,一部の人々の間で話題になっているGoogle Mapの「ピン」である.日本では東京と京都,海外ではニューヨーク,サンフランシスコ,ロンドン,バンコク,台北,マドリード,パリ,プラハ,モスクワ,クアラルンプール,香港にも登場しているとか.知らないと不気味だろうなぁ,このオブジェ・・・.

ちなみに新宿に行った理由は東急ハンズをぶらぶらするのがメインではなくて,眼鏡を探すことだった.私が今かけている眼鏡は,2年前せっかく福井にいるんだからと(福井県鯖江市は眼鏡フレームの国内シェア90%,世界シェアでも20%),増永眼鏡で作ったもので,確か8万円くらいしたのだが,かけ心地の良さと見やすさは文句なしで気に入っていた.しかし,昨日うっかり左レンズの中心に細かい傷を作ってしまったのだ.それで新宿の紀伊國屋の前にビルが丸ごと眼鏡店というのがあると聞いて,行ってみたのである.しかし・・・展示してあるフレームは中国製ばかりでまったくお話にならなかった.作りの悪さが持った瞬間分かる.

私は視力が0.03しかない上に,職業柄目を酷使するので,眼鏡はひじょうに重要である.10年以上前コンタクトレンズを使っていたときもあるが,本格的に研究するようになると,使えるものではないので,イギリスにいるときに眼鏡に切り替えた.Specsaversというところで安い眼鏡を作ったのだが,なんだかかけ心地も悪いし,見え方もクリアでなく苦労したものである(欧米人向けのフレームは鼻当ての位置が日本人には合わないと増永眼鏡で教えてもらった).

まあ細かい傷なので,このまましばらく使い続けるか,それとも青山の増永眼鏡に行って新しいのを作るべきか・・・.レンズだけ交換してもいいんだが,このレンズはパソコンの画面などからの照り返しをカットする特殊なレンズなので,それを扱っている店を探さなければならない・・・.面倒である.

2009年8月4日火曜日

里帰り

先週末は姉の家族が夏休みで来ている両親の家を訪問.ちょうど開催されていた地区の夏祭りに参加し(私はあの家には住んでいたことがないので,「地元」の思い入れみたいなものは一切ないのだが),姪や甥とUNOやトランプをし,数独を解かされ,姉が連れてきたキャバリア2匹と戯れていた.

日曜日にそのまま車で茨城の別宅へ.ひたちなか海浜公園でRock in Japan Festivalをやっていたので,臨時バスがせっせと駅と公園間を往復していた.調べてみるとこのフェスはRockin' On Japanがやってるのね.懐かしい雑誌名だ.まだあるんだね.夜は奥さんの誕生日が近かったので,少し豪勢にディナーをいただく.

茨城にいる間,高橋昌一郎の『哲学ディベート—<倫理>を<論理>する』を読んだ.取り扱っているトピックは,比較的よくあるものだけれど,比較的等身大の大学生的な意見が出ているのが,実際教鞭を取られている著者らしい.代理出産,安楽死,自殺などは依然として法学系の学生にも一度は考えて欲しい古典的かつ現代的トピックである.

レポートの締め切りも過ぎ,5日までに成績を出さなければならないので,これからせっせと読んで添削しなければならない.今回Course N@viという早稲田の授業支援システム(MoodleやWebCT, Blackboardのようなものの早稲田オリジナル版とでも言おうか)を使ってレポートを受け付けたが,締め切りがある課題をいつ提出するのかという分布が比較的はっきり見られて面白い.大体,1割くらいがかなり余裕を持って提出してきて,大半の人は締め切り日の早い段階で,ごく少数がぎりぎりに,そしてちらほらと締め切り後に相談してくる,というのが共通しているようだ.私は多数派の締め切り日の早い段階に出すカテゴリーに属するんだろうな.明日できることを今日やらない,と前任校の同僚が言っていたが,言い当て妙である.
 
QLOOKアクセス解析