2009年5月9日土曜日

フォーラム

今日は日本認知科学会と東大のCoREF共催の「総合学術辞典フォーラム−学問の危機と学問2.0−」というフォーラムが東大本郷であったので,ふらっと参加してきた.場所は赤門を入ってすぐのところにある情報学環の建物で,福武ラーニングシアターという中々ゴージャスなものでありました.ワインが並ぶカフェなんかもあったりして,モダンな感じのする建物.何回か東大本郷には来ているけれど,私の出身大学によって形成された「国立はぼろい」という固定観念を打ち砕かれる.歴史ある建物をきちんと維持し,モダンで綺麗な建物も違和感なく融合させていて,ヨーロッパの大学のようでいい感じである(慶應も私の勤務校の早稲田もこの辺をちゃんと考えていて,キャンパスを歩いていると何となく楽しい).

フォーラムは,昨年度末で東大を退官された原島さんの科学の歴史と今後の方向性に関する話で始まり,産総研の橋田さん,国立情報学研究所の方々の技術的な話があり,最近東大に移られた三宅さんのCoREFの取り組みについての話で終わるという流れで,中々楽しめた.特に原島さんの,パラダイムシフトが起こりえない現在の競争的資金による研究から脱却し,ギボンズ流の2つのモードとは違う第3のモードへの転換へと向かうというくだりは,研究者の端くれとしては,中々ぐっとくるものがあった(と言いつつ第1のモードでちまちま研究するのがやっぱり好きなんだけど).三宅さんは東大前総長が提言して始まった俯瞰講義について触れておられたけれど,もう少し時間がたって成果が見えてこないと,認知科学的な学習という観点からのつっこんだ話は難しいのかな,という印象はあった.始まったばかりだし,これからでしょうね.

分野横断的にそのつながりを見えるようにするという俯瞰講義の理念はひじょうによく理解できるけど,東大とはいえああいうのを学部1年生に導入するのは,中々難しいだろうなぁ.自分の経験を顧みても,取りあえず興味のあることをひたすら追求して,何か自分なりに研究と呼べるものを生み出すことから始まって,ふと周りを見渡し,なんとなくその周辺とのつながりが見えてくる,というのがむしろ普通なんじゃないかという気もする.そこから,とめどなく興味が広がっていくのが研究の面白さでもあるのだろうし.もちろん,ほとんどの人は研究者にはならないわけだし,学部生にも学問の輪みたいなものを実感してもらえたら,素晴らしいのだけど.
 
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