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2010年11月8日月曜日

PACLIC 24

2ヶ月くらい様々な事情で更新をしていなかったので,リアルで接触のない人にはついに逝ったかと思われているかもしれない.一応まだしぶとく生きています.

9月,10月と色々なことがあった気がするけど,いざ振り返ると10日ほど前の10月末にタイトなスケジュールの中無理矢理温泉に行ったことくらいしか思い出せない.大したことではないが,前回の熱川のように渋滞に巻き込まれる失敗はするまいと,奥さんの住む別宅のひたちなか市からスルッと北上していわき市の(なんでどこもかしもひらがなの地名なんだ)いわき湯本温泉に行ってきたのである.

ちょうど台風が直撃していたのだが,前任校で吹雪の中,別のキャンパスまで毎週100kmの道のりを車で往復して教えに行っていたことを考えれば,そよ風みたいなものである.温泉は湯の質も良く,料理もアンコウ鍋や地元名産目光の唐揚げを,地酒の大吟醸と一緒にいただいて,大変満足.帰りは高速ではなく地道を台風で荒れる太平洋を横目に,日立帝国を通過する道のりをゆっくり走ってきて,中々楽しかった.東京に来てから,冬にタイヤをスタッドレスに交換しなくなったので,しばらく雪が降りそうな地域にはいけないのが残念である.ジャッキアップして,自分でせっせとタイヤ交換していたのが懐かしい.

そして先週末は東北大学でPACLIC 24であった.私はプログラム委員長ということで,主な仕事は学会前に終わっていて,当日はゆっくり楽しもうという魂胆だったのだが,まあなんだかんだで色々忙しかった.とりあえず表面上は大きなトラブルもなく,無事終わったので一安心である.裏方で東北大の大学院生の皆さんがよく動いてくれて,とても助かった.アジアからの留学生もたくさんいて,雰囲気も良く,てきぱき働くのを見て,中々微笑ましいものがあった.もう少しゆっくり皆さんと話す時間があれば良かったのだけど.

役割上,学会前に発表者と色々やり取りすることがあり,実際それらの人たちと直接会って,話すことができたのはとても楽しかった.元々イギリスにいるときから,この手のことはよくやっていたのだけど,帰国後しばらく孤立した環境にいたので,再び学会運営を通じて様々な研究者と交流を持てるようになったのは喜ばしいことである.あと,東北大で研究員をやっているイギリス人が,お互い院生時代に何度か学会で顔を合わせていた人で(彼は当時オランダの大学にいたのだが),実に7, 8年ぶりに再会できてとても懐かしかった.シンガポールでしばらくポスドクをやった後,東北大でもう1回ポスドクをして,今は研究員ということだけれど,相変わらず私には全然ついていけないゴリゴリのformal semanticsで,思わずニンマリしてしまった.

あとは余談としては,韓国からきた人に,ホテルのテレビをつけるとよく早稲田の野球選手が出ているけどなんでなの?と聞かれたり(斎藤君のことだろう),香港から来た人に,村上春樹本に載っていた観光コースに従って早稲田大学界隈を歩いたと言われたり,研究とは別の意味で早稲田の影響力を実感したりして.

11月はあと日本英語学会も日本言語学会もあるし,割と色々なところに出没することになりそう.気づけば休日が1日もない月だけれど,まあカレンダー上は休みの週末も休むことは稀なので,あまり変わらないのかも.

2010年9月9日木曜日

LAGB2010

9月初めにイギリス言語学会(Linguistics Association of the Great Britain; LAGB)がリーズ大学で開催され,ふらっと発表しに行ってきた.出発前も学会中も細々とした仕事があって,ぱちぱちとメールを書いたりして,多少落ち着かない感じはあったけれど,学会自体はとても楽しかった.

最後にLAGBで発表したのは,2005年のケンブリッジ大学のときだから実に5年振りの参加である.ちなみにMAのときの生まれて初めての学会発表もLAGBで,今は亡きマンチェスター工科大学(University of Manchester Institute of Technology; UMIST)で行われた2002年秋季大会であった(当時は春と秋,年2回開催されていた).その次の2003年春季のシェフィールド大学でも発表したので,ある意味大学院の研究の進捗の目安のとしてLAGBで発表してきたとも言える.もう1つの目安は国際LFG学会で,こちらは2003年米国ニューヨーク州のSUNY, 2004年ニュージーランドのカンタベリー大学,2005年ノルウェーのベルゲン大学で発表して,それ以来ご無沙汰である(要は日本に帰国後,早稲田に移るまであまり発表してこなかったということか...).

今回は,初日にHenry Sweet LectureとしてMax Planckの大物Stephen Levinson,最終日にLinguistics Association Lectureとしてこれまた大物のJoan Bybeeの招聘講演があったので,うきうきである.Levinsonのトークは,言語のinfrastructureについてで,cultural productとしての言語という観点から,類型論的,進化論的な議論を展開していて,大変面白かった.同日のワークショップでも同じくMax PlanckのNick Enfieldが同種のトークをしていて,こちらも中々良かった.Bybeeの方は,exemplar-based model (Usage-based model) として彼女が昔から主張している,言語使用における各表出形式のトークンの頻度の重要性や使用状況とペアにした記憶のメカニズムなどを,実例とともに丁寧に議論していた.どちらは所謂機能主義的な立場からの話だったので,チョムスキー派の人々にはあまり楽しくないトークだったかもしれないが(後からパブで聞いたところによると,UCLの某H v K氏は相当不満だったようである),広い意味での認知科学的なアプローチとして,とても興味深い話で勉強になった.来年はMark BakerがHenry Sweet Lecturerの予定ということなので,チョムスキーな人たちは来年楽しめば良いのではないだろうか.


学会も無事終わり,割と古くからの仲になるSurrey Morphology Group (SMG)の2人とナイロビでフィールドワークをしているSILの人と,タクシーに乗り駅前に行き,パブで飲んで,街をちょっとぶらぶらして,一緒に電車でロンドンに戻った.

ロンドンではEuston Squareの横のホテルに止まっていたのだが,翌日空港に向かうため地下鉄に乗ろうとすると,イギリス日曜名物engineering workでCircle LineとHammersmith & City Lineが動いてなくて,結局Victoria Lineで南に下って,Oxford CircusでBakerloo Lineに乗り換えて再度北上してPaddingtonに行く羽目になった.何のためにEuston Squareにホテルをとったのか分からないが,まあイギリスらしいと言えば,そうである.

空港に向かうHeathrow Expressの中では,アンケートに協力してくれと言われて,色々質問に答えた.「いつも思うけどたった15分の道のりで片道18ポンドはねぇだろ.高ぇよ.学生時代は絶対乗らなかったね.いつもPiccadilly Lineで行ってたよ」と言いたいところだったが,最近の円高でなんとなくお得感もあったので,細かい質問に答えた後,
まあfastでgoodなサービスなんじゃない,と無難な全体の感想を述べておいた.

帰国して,BBCを見てみるとtubeのストライキのニュースをやっていた.まあ,これに巻き込まれなかっただけでも幸運だったと言えるかな.さすがイギリス(まあこういうところが案外好きだったりするのだけど...).

2010年5月11日火曜日

国研コロキアム

GWも私はぽつぽついくつか打ち合わせが入り,奥さんも仕事があったりして,なんだかよく分からないうちに終わった.まあ春の連休の教訓もあるので,特にイベントもなく過ごすというのが正解だとは思うが.

先週末は早稲田の高等研究所の知り合いが誘ってくれた国立国語研究所のコロキアムに行ってきた(Google検索でいまだに旧ページがトップにくるのは,どうにかした方が良いのではないだろうか).今回のコロキアムは,私も元指導教官のAndrew Spencerを経由して間接的によく知っているAndrej Malchukovのトークである(AndrewとAndrejはThe Oxford Handbook of Caseの共同編集者である.Elsevierから出ている本に私とAndrewの論文とAndrejの論文が一緒に載っていてお互い知っているというのもある).

いつもとは逆方向の電車に乗って,玉川上水で多摩モノレールに乗り換えて高松という駅で降りたのだが,道路も歩道・自転車道も広く,無機質な建物群と広々とした芝生が目立っていて,なんだか「つくば」とか「けいはんな」に似た雰囲気の場所である.ここにアメリカ軍がいたのか,と思いながら歩いていくと,ほどなくして国立国語研究所に到着.2005年に建てられたばかりで,名前のイメージとは裏腹にピカピカモダンな研究棟である.

トークは格についてで,広範なデータとそれらの機能的および最適性理論での分析が秀逸で面白かった.私は博士論文がまさに格についてなので,データ自体はほぼ全部身近なものだったが,私は数理的な分析が主なので,機能的なアプローチは中々新鮮であった(ちなみに日本ではなぜか機能的というと認知言語学的と考える人が多いようだが,何故だろう?).トークの後,他の参加者と一緒に立川で夕食+飲みに行くこともできて,そちらもひじょうに楽しかった.

格はなんせずっと博士課程の間研究してきたので,ここしばらくあまり食指が動かなかったが,やはり面白いテーマなので,またぼちぼちより深めた研究をやってみようと思う.類型論の講義でも,格は割と学生が興味を持つトピックだし.

2010年3月17日水曜日

日本語コーパスワークショップ

今週は月・火と東工大の蔵前会館で,科研費特定領域研究「日本語コーパス」のワークショップがあったので,一部に参加してきた.東急目黒線というのは初めて乗ったのだが,どの駅もピカピカで広々としたホームには防護柵があって,心地が良い.私が通勤で常用している西武新宿線とはえらい違いだ(狭くて毎晩人が溢れそうになっている高田馬場のホームをなんとかして欲しい).昼食時に東工大がある大岡山駅の商店街をうろうろしてみたが実に感じが良かった.八百屋,魚屋,肉屋,豆腐屋,米屋,酒屋が並んで普通に賑わっているのは,結構珍しいのではないだろうか.

私はデータ処理やツール作成などのコーパス自体の研究というのはやっていないが,理論的研究に統計的な視点を加えるのには興味がある.特に形態論,レキシコンの研究というのは,母語話者の直感(内省)があまり当てにならないことも多いし,使用頻度が語彙構成に与える影響というのは認知科学的な研究では無視することはできないので,コーパスの存在はとてもありがたいものである.ただ大規模なコーパス構築には人的労力が膨大になるため,今回の領域研究というのはその意味でも意義深いものである.利用する立場の我々研究者もプロジェクトに関わっている各分野の方々に感謝せねばならない.

今回のワークショップの導入で言及されていた,素人的視点の「コーパス構築は業者に委託すればいい」や「コーパスは役に立たない」といった的外れの批判もこれまであったようだけれど,国立国語研究所も独立行政法人から大学共同利用機関法人になって,運営が比較的スムーズに行きそうとのことなので,がんばっていただきたい.

2010年3月14日日曜日

EELC2010

先週末からprogramme chairをやっている学会でprogramme committeeに入ってもらう依頼のメールを色んな人に90ほど送り,返事に対応するという割とこまめな仕事をしていた.面識がない人に頼みごとをするのは割と気を使うのだが,イギリス時代の知り合いなんかにもコンタクトが取れて結構楽しい一面もある.一応それが一段落し,3月10−12日の3日間に渡って,キャンパスプラザ京都で言語進化のセミナーJAIST-EELC2010があったので参加してきた.

Tecumseh Fitchの音声・統語に関して,系統発生的視点,および同種の特性の異なる進化系統間の比較から得られる知見を分かりやすく丁寧にまとめた発表は,実に分かりやすく有益であった.Cedric Boeckxは,個人的な偏見と無知でもっとゴリゴリのミニマリストな論を展開するのかと思っていたのだが,言語学者が分野横断的な言語進化の研究をする際のポイントを的確に論じていて,共感する点が多かった.Cedricは30代にして10冊の本と100本の論文を発表していると紹介されていたが,いやはやすごい人もいるものである.

私自身は言語進化に関しては,PhDを取って以降興味があってフォローは一応してきているが,言語学者としてどう関わるかに明確な態度を示すことができないので,積極的な研究というのはしていない.これまでやってきた「言語理論」を全面に押し出した論を展開してもあまり意味がないし,かといってひじょうにgenericな形での主張をしても言語学専門の研究者としての意義のある貢献になるのかと自問してしまう.この辺のバランスがひじょうに難しく感じる.レキシコン関係でモデルを構築していけば,今やっている形態論の研究とも接点が持てる気がするが,基本的に実験系ではなく理論系の方が好きなので,悩ましいところである.

2010年2月20日土曜日

「脳科学と社会」シンポジウム

昨日ハイボールのところで五木寛之氏について言及したが,今日新宿を歩いていたら,五木氏が直木賞の選評コメントに大きな間違いをしてしまい自ら審査員を辞任する,というニュースが電光掲示板に流れていた.単なる偶然だが,誰かさんのようにここがデスブログにならないといいのだが...

今日は「脳科学と社会」のシンポジウムがあったので行ってきた.両国であったので,大江戸線という漫画に出てきそうな名前の地下鉄に初めて乗った.6の字形に走っていて,進行方向がよく分からない地下鉄である.両国駅には江戸東京博物館なんてのもあった.「江戸」と強調している割には,大して歴史のある建物がないのが東京らしい.

シンポジウムは結構大入りで盛況であった.内容も総括である日立製作所の小泉氏の導入(私の父親は若い頃日立製作所で電子顕微鏡やスーパーコンピュータを扱っていたらしいので,ちょっと親近感が湧く),JSTの研究開発センター長で元東大総長の吉川氏の基調講演は,巨視的で切り口が面白くとても楽しめた.その後の研究発表もJSTが強力に資金注入した双生児,言語習得,学習意欲,発達障害への脳科学的アプローチに関するプロジェクトの成果報告だけあって充実していたように思う.

ちなみに休憩時間に「こんにちは」と見知らぬ年配の方に声をかけられたので,この人どっかで会ったかなと困っていたら,単に脳波測定ができる人を探しいている人だった.7年間も探しているそうだが,本気で研究するつもりだとしたらありえないことである.その程度のレベルではやめておいた方が身のためですよ,とはさすがに言わなかったが.

私の分野に一番近い発表だと首都大の萩原裕子さんの言語習得のプロジェクトであるが,不純な見方ながら,お金がかかってるなぁ,というのが第一印象であった.脳波測定トポグラフィー2台を積んだ移動式トラックを作り被験者の脳波測定をして,日立製作所にデータ解析してもらうというのは,なんともすごい話である.ただ研究対象が小学生ということで,自治体,教師,保護者との交渉で大変苦労されたようだし,プロジェクトの規模が大きいだけにプレッシャーも大きかったのではないかと想像する.プロジェクトには,私のいたイギリスの大学院の先輩が参加していて(時期が数年ずれているのでお会いしたことはないが),今回の萩原さんの発表でもfirst authorで論文がいくつか言及されていたので,大いに活躍しておられるようである.

シンポの後,久々に東京の東側に来たので秋葉原に寄っていったのだが,ヨドバシをぐるりと見ただけですっかり疲れてしまって,そのまま帰ってきた.まあ色んな最新の製品を見て「すげー」と言ってるだけで,結構楽しいのでいいんだけど.

2010年2月15日月曜日

学生連携

ろくにブログを更新しないまま,もう2月も半ばを過ぎてしまった.大学も入試シーズンに入り,私の所属する学部の入試も終了した.約1ヶ月間学生の立ち入りが禁止され,教員も限られた門から職員証を見せて出入りしなければならない.結構面倒である.今あるセコムのセキュリティカードで認証してキャンパスも建物も入れるようにしたら良いと思うのだが,やはり大学全体の規模でやるにはコストの問題があるのだろうか,それともセキュリティが甘くなるのだろうか.あるいは『ガタカ』みたいにするとか.

先日,今年1年間教えた1年生の学生から,この夏に東京でアジア諸国の法学生とともに様々な問題を議論する会合を開くための助成に応募するから推薦状を書いて欲しいと(とても丁寧に)お願いされた.100人以上の参加者で1週間ほど開くというから結構な規模である.趣旨もとても共感できたし,企画もよく練られていた.とても優秀なのはもちろん教えていて分かっていたけれど1年生にして実行委員長をしているその学生の活動力に素直に感心してしまった.私の推薦状がどれほどの効果があるか分からないが,無事助成をいただいて,企画を成功させて欲しいと思う(私も覗いてみたいくらいである).

そんな学生の姿を見て,ふと自分の院生時代を思い出した.2002年にマンチェスターのUMISTで開催されたイギリス言語学会で生まれて初めての学会発表をした際に,ヨーク大学の院生だったAlexandara Galaniと知り合いになり(形態論をやっている学生はほとんどいないので,すぐ知り合いになる),翌年ケンブリッジのPostgraduate Conferenceで再会したときに一緒に形態論のワークショップを定期的に開こうと意気投合してYork-Essex Morphology Meetingというのを立ち上げた(ウェブサイトは私が個人的にエセックス大学のアカウントで作っていたのでもう消えていると思ったら,お願いしなくても言語学科が引き続き管理してくれていた.ちょっと感動).イギリス言語学会に資金援助をお願いし,ありったけの人脈を使ってイギリスやヨーロッパの研究者に参加をお願いし,知り合いの大学院生にも「ちょっとでも形態論に関係あればいいから」と発表を勧めた(こうでもしないと形態論は発表者が集まらない).もちろん会場の手配,ティーブレイクの飲み物やお菓子の買出しから,会合後の懇親会の場所探し,学生用の安価なB&Bのリスト作成まで全部Alexと日々電話で相談しながら2人でやった.

今思えば無謀なことをしたものだと思うが,なんとか自分たちの専門分野を活性化したいという大学院生2人に多くの人が惜しみない援助をしてくれたのがなにより心強く,ゼロからの立ち上げということで学問以外の面でも学ぶことが多かった.世界的に見れば,長い歴史を持つアメリカのCLSやBLSも院生が立ち上げたもので,今だって院生によって運営されているし,ヨーロッパのConSOLEもそうである.イギリス国内にもPostgraduate Conferenceは複数ある.

あまり偉そうに発破をかけたくないのだが,日本もちょっとくらいそういう学生主体の全国的な学会があってもいいんじゃないだろうか.日本英語学会にStudents' Workshopというのがあるが,ああいう既存の学会に乗っかって3つか4つのワークショップをやっても盛り上がらないだろう.それよりも自主的に企画運営する学生独自のワークショップを援助してあげた方が彼らのためになるのではないかと思う.大学院生の皆さんも,こんな狭い国だし電子的に簡単に連絡が取り合えるのだから,連携して学会なりワークショップなりを立ち上げてみてはいかがだろうか.欧米でPhDを取ってきた研究者が多い今なら結構サポートもしてもらえると思うのだけど... 法学の学部生にできて,言語学の大学院生にできないはずないよね(というのはいじわるな言い方か).

2009年12月6日日曜日

国研シンポジウム

今日は気持ちの良い快晴.最近忙しくてろくに掃除もしていなかったので,布団と洗濯物を干して,大掃除をする.ただ微妙に体調が優れなかったのが悪化してしまったような気もする.今頃無理したダメージがきているのだろうか.

昨日土曜日は国立国語研究所のシンポジウムがあったので,ふらっと参加してきた.朝日新聞が後援ということもあって,会場は西武百貨店,阪急百貨店,トーホーシネマズ,松竹ピカデリーが入っている有楽町マリオン11階の朝日ホール.言語系の学術会議ではあまりない中々豪勢な雰囲気であった.

国立国語研究所は,Google検索だとまだ旧体制のページがトップに出てくるが,10月1日から大学共同利用機関法人 人間文化研究機構の一部となり,影山先生が所長になって大分印象が変わった(ウェブサイトはこちら).今回は新体制になって初めてのシンポで「ウチから見た日本語,ソトから見た日本語」というテーマで4つの講演があった.どうも一般向けの内容を狙っていたようで,参加者も学者というよりは一般のお年寄りが多かったような....朝日新聞後援だから新聞広告でも見て興味を持った人が,有楽町,銀座で買い物ついでにというノリで参加していたのかもしれない.

ということで,方言(阪大の工藤真由美さん),幼児言語獲得(バーミンガム大の喜多荘太郎さん),類型論(元東大,現国研の角田太作さん)の言語学系の話は,ほぼ知ってることばかりではあった.ただもう1人の劇作家で阪大教授の平田オリザさんの話は大変面白かった(コミュニケーションデザインセンターという中々面白いセンターに所属していらっしゃるそうな).劇作家らしい鋭い言語への考察と実に幅広い知見が感じられ,語用論,談話分析,社会言語学などを専門にしている若手研究者にとっては結構有益だったのではないだろうか.私は専門には直接関係ないが,語学の授業で活かせそうなヒントをいただいた.

帰りに会場を出ると,寒々と雨が降っていた.そのまま帰宅するのもなんなので,研究室に寄ったのだが,結局いつものように夜10時過ぎまで細々としたことをしていて,なんだか体調を微妙に崩してしまった(で,初めにつながる).

2009年11月17日火曜日

日本英語学会09

先週末は英語学会.開催地は母校の大阪大学である(学部しか行ってないけど).前回阪大を訪れたのは,千里阪急ホテルで結婚式を挙げた翌日に車で寄ったときだったと思う(奥さんが研究室に本を返しに行ったんだったかな).その後,箕面で猿を見ながら山道をドライブして,山の上にある神社でうどんを食べて,自宅に戻った.新婚旅行というものに行っていないので,今思えばあれが新婚旅行だったのかもしれない,と今でも夫婦間のネタになっている次第である.

話が大きく逸れたが,石橋方面から阪大坂を歩いて登ったのは,多分卒業してから初めてということが言いたかったのだ.まさか坂が全面石畳になって,池が埋め立てられ,さびれた旧看護学科跡地(だったかな)になんか博物館のようなものが建っているとは・・・.随分な変わり様である.ネコがうろうろしているところは変わっておらず,安心したが(狩りをして捕らえた鳩を自慢げにくわえて歩いている黒ネコがいた).

学会の開催場所だった共通講義棟というのは,私が学生だった頃はA棟しかなかったのだが,廃屋のようだったロ号館(名前がいかにも昭和である)がつぶされてB棟とC棟とかいうのが建っていた(イ号館は確か文化財なので健在だった).ただそこは国立らしく,新しく建ててもろくにメンテや掃除をしないので,すでにどことなく寂れていた.最初に発表を聞きに行った教室なんて,小学校みたいな机と椅子で,なんだこれはと思ったら椅子の後ろに「ロ号館」と書いてあって爆笑してしまった.ひょっとしたら12年前私がドイツ語の講義で熟睡していた机と椅子かもしれない.

専門分野のずれもあって,それほど個人的に心躍る発表はなかったが,日本英語学会は日本に知り合いの少ない私でも比較的面識のある人がいるので,中々参加していて楽しい学会だった.学会運営に関しては,色々疑問に思う点もあるけれど,多分同じようなことを私に近い年代の人たちは思っているだろうし,これは時間でしか解決できないだろう.あと10年くらいすると,かなり変わるかもしれない.

それにしても私は言語学者だから疑問に思うのかもしれないけど,日本英語学会にとっての「英語学」ってなんなんだろう.多くの発表が英語以外の言語についての研究だったと思うのだけど.実質は日本「英語学及び理論言語学」会と解釈すべきなのだろうか.こんなことを考えながら,新幹線に乗って東京に戻ってきた.

最近は色々やることがあって,学会前の金曜日も学会後の日曜日もほとんど寝ることができず,これから年末までも大体週末まで予定が入っていて慌ただしい.寒くなってきたし,取りあえず体調を崩さないようにしないといけないなぁ.

2009年10月21日水曜日

研究の秋

Apple怒濤のアップデートか.相変わらず,新しいことやってくるよなぁ.Magic Mouseどうしようかな.別に今のiMacについてるマウスで不満はないんだけど.iMacも4月に研究費で買ったばかりなのに,こんなにパワフルになってしまうとは.なんとなく悲しい.別に現状に不満はないのだけど・・・.

Appleといえば,先日うちの奥さんが新型のiPod touchを買ったのだが(池袋のビックカメラはものすごい人だった),私の旧型と比べるとサクサク度が全然違う.Safariなんて,かなり高速になって,とても快適になっている.こちらも現状に不満はないのだけど・・・.

仕事の方は,取りあえず科研費の申請も終わって,一息.最後のつめが結構大変で,疲労感が大きかった(しかも今日は午後3コマ講義の日で倒れそうだった).3年前は,両面印刷した申請書の端を糊付けして,角を三角に黒く塗りつぶして,とかいう原始的なことをやっていたが,e-Radの電子申請になって随分簡単になったのは,良いことだ.私は,LaTeXで作ったpdfをそのままアップロードしたけど,ワードで作ったファイルも,アップロードする際にpdfに変換されるようだ.

科研費は出してから決定まで半年もあるので,出した後は気にせず出来る研究をコツコツやっておくのが精神衛生上良い.取りあえず,バタバタしがちな10月中盤を越えたので,これから少しは落ち着くだろう.明日は大学の創立記念日で休み(午前中打ち合わせが入っているけれど).明後日も臨時の休日だそうな.「研究の秋」である.

2009年10月14日水曜日

数理的機能主義

月曜日は祝日だったようだが,大学は講義回数確保のため通常の時間割(ハッピーマンデー意味無し).昨日は午後から3コマ講義,今日は午後と夜に会議.どの日もどことなく慌ただしく,夜中には疲れて研究室で1時間ほどうたた寝するという,なんだか非効率的な日々である.科研費申請の締切も迫っているので,そろそろ採択されるような形にまとめないといけないんだけど,現状では駄目だろうなぁ.バタバタとした生活のつけが回ってきてる感じだ.

これまでずっと自分の研究はかなり数理的なアプローチで進めてきたのだが,最近Bybee のMorphologyを読み直したり,講義準備の関係でCroftのRadical Construction GrammarやVan Valin & LaPollaのRRGベースのSyntax辺りを参照していると,もう少しポジションを言語使用も重視した機能的な方向に傾けた上で,数理的に形式化する方向に持って行ければ,それが理想的にも思える(ここでUsage-basedと言ってしまうと,そっち方面のラベルが貼られてしまう感じもするのが悩ましい).私が専門とするLFGは,本来機能的なアプローチを取り込んだ枠組みであってよいはずなんだけれど,自然言語処理との関係もあって中々保守的な部分も多いので,「うまいこと」数理的に組み込まないと失敗するのがオチというのが悩ましい.形態論は,次回のInternational Morphology Meetingもfrequencyがテーマになっているくらいだから,こっちの方を中心にしばらくやっていった方がいいのかもしれない.私の元指導教官もLFGとは距離を置いて,結局こっちに戻ってきそうな気がするし.

自身の研究の苦悩はさておき,今学期開講している形態統語論と言語類型論の講義は,準備は結構大変だけれど教えるのは楽しい.受講者の皆さんのコメントも中々新鮮なものが多くて面白いし.今週は適用態,与格交替,使役を項構造と絡めながら話したのだが,ちょっと詰め込みすぎたかもしれない.次は2週に渡って格と文法関係の予定なので,能格言語,活格言語,accessibility hierarchy(日本語で何て訳すんだろう?)なんかを含めて,なるべく面白く話せればと思う.

2009年9月15日火曜日

秋刀魚

もう9月も折り返し地点である.気がつけば,もう半袖では肌寒く,研究室のエアコンも不要になる季節になっている.北海道産の秋刀魚を肴に一杯やるというのがこの季節の小確幸.

先週後半は慶應SFCで日本認知科学会が開催された.私は結局興味のある発表があった初日だけ参加したのだが(SFCって微妙に遠いから,よっぽど聞きたい発表がないとわざわざ毎日通う気にならなかった),招待講演の神戸大の定延さんは「体験」というものの言語における位置づけを,経験的データを元にユーモアを交えながら発表されていて,とても面白かった.今度ご著書を拝読したいと思う.

今週は教授会を始め諸々の会議があったり,書類を作ってNYのとある知り合いに送ったり,科研費の書類をぼちぼち進めたり(大阪大学理学研究科の山中さんが今回も科研費LaTeXの提供を開始して下さった.ありがたい),頼まれていた論文査読をしたり,慌ただしい.再来週には後期も始まるので,巷で言われているシルバーウィークなんて我々には無縁である.企業の人も決算前で忙しいに違いない.

そんな中,大学に届いていたNew Scientistの特集は中々面白い(イギリスからの国際郵便なので少し前の8月29日号ではあるのだが).特集は次元(dimension)についてで,0次元,1次元,1.5次元,2次元,3次元,4次元,5次元,6次元,8次元,10次元とそれぞれについての話が載っている.知覚を超えたものを考えるというのは,自然科学の神髄である.知覚できるものだけを見ていても深い発見は得られないというのは,言語学にも当てはまる.

2009年7月5日日曜日

MLF

予告通り,昨日,今日と東北大学で学会だった.東京より北部の距離感がよく分からないのだけど,上野から仙台までたった1時間半で着いてしまうとは,驚きだった.仙台の街も思っていたより遙かに都会でなんだかイメージが変わった(どんなイメージを持っていたのか・・・).

学会はこじんまりしていて,雰囲気も良かったし,面白い発表も結構あって,楽しめた.ちなみ2日目の小泉さんの語彙アクセスの認知脳科学チュートリアルで出てきたStockall & Marantz (2006)の論文の話でふと思い出したのだが,あの論文のMEGによる実験から得られる帰結は,DMを支持しているというよりは,realizationalなアプローチ全体を支持しているだけではないだろうか(あの主張はMarantzが言ってることだから,当然小泉さんとは直接は関係ないのだけど).MarantzはDMの提唱者なんだから当たり前だろと言われればそうなのかもしれないけど,最近時々見られるMEGとかfMRIとかのデータを持ってきて特定の理論的モデルをサポートする方向に持って行く議論というのは,そもそも方法論として適切なんだろうか.
まったく話は変わるけど,仙台といえば牛タンということを聞き,初日の夜ホテルにチェックインする前の早い時間に,牛タンの炭火焼きをいただいた.歯ごたえがあって,肉の旨味が出ていて,とてもおいしかった.店を出たときには,外に結構並んでいたので,早く行って正解だったようだ(まあホテルで仕事しなきゃいけなかったので,早く行くしかなかったんだけど).他にも仙台は笹かまぼことかずんだ餅が有名だそうで,次回行くときに試してみよう.来年春の日本言語学会が東北大らしいので,その時かな.

2009年6月22日月曜日

日本言語学会

更新を随分さぼっていたけれど(なんだか先週は精神的にぐったりするようなことが多かったもんで),先週末は神田外語大学で日本言語学会,今日は玉川大学でG-COEの講演に参加してきました.

梅雨入り後,雨ばっかりだったが,言語学会初日は太陽も出ていて,猛暑日だったとのこと.行きは総武線の幕張駅から歩いたら,結構距離があって,到着時にはへたってしまった.帰りは逆方向に歩いて,京葉線海浜幕張駅から東京駅経由で帰ったら,今度は京葉線のりばと東京メトロの大手町が,所謂「東京駅」の両端に位置しているので,すごく歩く羽目になった.「乗り換え」っていうのかな,あれ.しかし幕張ってのは,近未来都市みたいだな.土日でオフィス街ががらんとしているから,余計そんな雰囲気が漂っていた.あと帰りに舞浜で乗ってきた千葉ネズミーランド(冗談ですよ)帰りの人々のテンションがもすごくて,辟易した.有限状態文法のソースコードをちまちま読んでいたんだけど,あまりのノイズにあきらめてしまった.まあ気持ちは分からないでもないけど,子供じゃないんだから・・・.

言語学会初日の研究発表は中々楽しめたのだけど,首を傾げたくなるような発表もあった.(・・・後から読み返すと辛辣過ぎた気もするので,具体的批判は削除することにしました.ああいう発表が今後ないことを祈ります)

今日は,言語学会の公開シンポで来ていたRizziその他の発表が神田外大で引き続きあったようだが,上述したように玉川大学にもグローバルCOE関係でカナダのマクマスター大学からDaphne Maurerさんが共感覚について講演に来ていたので,私はそちらに顔を出してきた.割と少人数のこじんまりした講演だったけれど,内容はひじょうに面白く,勉強になった.共感覚と言語の起源あたりの議論は,あまり知らなかったので,ちょっと文献を掘り下げてみたいところである.

そんなこんなで大学巡りみたいに,あちこちに行っているわけだけど,自宅には3月まで住んでいた永平寺町から住民税の請求が来ていた.東京だとゆうちょ銀行で払うしかないので,面倒である.まとめて払うと結構な額なので,ATMではなくて銀行の窓口でお金も引き出さないといけない.3時までしかやってないからとても不便である.クレジットカードで払えるようにしてくれたら,払う側と処理する側どれだけの人間の手間が省けることか.さらに,自動車運転免許の更新もしなければいけない.色々考えただけで嫌になるなぁ.

2009年6月1日月曜日

英文学会

先週末は日本英文学会が予定通り東大駒場で開催された.英文学会は,言語学系の発表はそれほどたくさんはないのだが,結構頻繁に参加している(うちの奥さんが英語文学が専門なので,ついでに同行しているという感もあるが・・・).

今回はあいにくの悪天候だったが,開催校が東大ということもあって,結構な参加者数だったようである.私も2日とも参加したのだが,初日は類型論絡みのシンポジウムが中々面白かったものの,2日目は個人的にはなんだか実りの少なくて残念であった.あとは出版社の書籍展示が割とたくさん開かれているので,研究費で3冊(くろしお出版2冊,ひつじ書房1冊)注文して,大学に送ってもらった.くろしおから買った角田太作さんの『世界の言語と日本語:言語類型論から見た日本語』の改訂版と土屋俊さんの『言語哲学コレクション2:心の科学の可能性』は,もう届いていた.まったく毛色の違う2冊であるが,どちらも面白そうで,読むのが楽しみである.

本と言えば,先日話題にした村上春樹の『1Q84』を発売日前に買ったのだが,週末が学会だったので,まだ上巻すら読み終えていない.学生時代なら,大学をさぼって徹夜で読んだだろうが,さすがに今やると仕事に支障が出るので,細切れな時間でぼちぼち読むしかない(それでも寝不足になるのだが).学部生のときに恩師が「学生時代は夢中になって本を読みなさい.それで授業をさぼったって構わない」と授業中に学生に向かって話していたのを思い出す.まったく同感である.多感な時期のむさぼるような読書体験は,そのときにしか得られない財産になる.そんなことができるのは,大学生の時期くらいなのかもしれない.

2009年5月23日土曜日

神経科学リテラシー

今日は東大駒場で「神経科学リテラシー」というシンポジウムに出席してきた.新型インフルエンザの影響でどうなるかな,と思っていたが,何事もなく開催されて良かった.朝10時から夕方6時前までと,中々の長丁場だったが,興味深い話が多く,楽しめるシンポであった.

ここ数年,メディアにやたら登場して何でも脳に絡めて与太話をする脳芸能人がいたり,脳を鍛えるとかいう触れ込みのゲームやら本やら訳の分からないものが巷に溢れていたりして,ひじょうに気味が悪い.気味が悪いくらいで済めばいいが,この手の偽科学が広まるのはかなり危険である(子供に見せたくない番組というのを毎年PTAが発表しているが,そこに登場する常連番組より,脳に関する偽科学を扱った番組の方が,教育上遙かに危険だ).

そういう危険を察知してか,東大駒場の科学哲学の人たちが脳科学,神経科学の専門家(脳芸能人ではなく本物の)と,神経科学のリテラシーを高めるという目的で立ち上げたプロジェクトが今回のシンポの主催者の方々である.教科書を執筆し,学部教養課程の学生向けへ導入した試みを初め,脳科学・神経科学と社会との関わり,脳疾患と精神疾患,法体系の再整備,人間観の変化などについての議論も多くあり,想像以上に根深い問題がありそうだという印象を持った.

私自身,法学部に身を置く認知科学者であるので,リーガルマインドと科学リテラシー,神経科学リテラシーとの関わりというのを考えてみる良いきっかけを与えていただいた.普段教えている感触からすると,法学専攻であっても早稲田の学生はそれほど自然科学にアレルギーがないようなので,もう少し社会・法との関わりを感じられるように,脳・認知に関わる諸問題を提示できる方法を模索してみようと思う.

2009年5月9日土曜日

フォーラム

今日は日本認知科学会と東大のCoREF共催の「総合学術辞典フォーラム−学問の危機と学問2.0−」というフォーラムが東大本郷であったので,ふらっと参加してきた.場所は赤門を入ってすぐのところにある情報学環の建物で,福武ラーニングシアターという中々ゴージャスなものでありました.ワインが並ぶカフェなんかもあったりして,モダンな感じのする建物.何回か東大本郷には来ているけれど,私の出身大学によって形成された「国立はぼろい」という固定観念を打ち砕かれる.歴史ある建物をきちんと維持し,モダンで綺麗な建物も違和感なく融合させていて,ヨーロッパの大学のようでいい感じである(慶應も私の勤務校の早稲田もこの辺をちゃんと考えていて,キャンパスを歩いていると何となく楽しい).

フォーラムは,昨年度末で東大を退官された原島さんの科学の歴史と今後の方向性に関する話で始まり,産総研の橋田さん,国立情報学研究所の方々の技術的な話があり,最近東大に移られた三宅さんのCoREFの取り組みについての話で終わるという流れで,中々楽しめた.特に原島さんの,パラダイムシフトが起こりえない現在の競争的資金による研究から脱却し,ギボンズ流の2つのモードとは違う第3のモードへの転換へと向かうというくだりは,研究者の端くれとしては,中々ぐっとくるものがあった(と言いつつ第1のモードでちまちま研究するのがやっぱり好きなんだけど).三宅さんは東大前総長が提言して始まった俯瞰講義について触れておられたけれど,もう少し時間がたって成果が見えてこないと,認知科学的な学習という観点からのつっこんだ話は難しいのかな,という印象はあった.始まったばかりだし,これからでしょうね.

分野横断的にそのつながりを見えるようにするという俯瞰講義の理念はひじょうによく理解できるけど,東大とはいえああいうのを学部1年生に導入するのは,中々難しいだろうなぁ.自分の経験を顧みても,取りあえず興味のあることをひたすら追求して,何か自分なりに研究と呼べるものを生み出すことから始まって,ふと周りを見渡し,なんとなくその周辺とのつながりが見えてくる,というのがむしろ普通なんじゃないかという気もする.そこから,とめどなく興味が広がっていくのが研究の面白さでもあるのだろうし.もちろん,ほとんどの人は研究者にはならないわけだし,学部生にも学問の輪みたいなものを実感してもらえたら,素晴らしいのだけど.
 
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