私はデータ処理やツール作成などのコーパス自体の研究というのはやっていないが,理論的研究に統計的な視点を加えるのには興味がある.特に形態論,レキシコンの研究というのは,母語話者の直感(内省)があまり当てにならないことも多いし,使用頻度が語彙構成に与える影響というのは認知科学的な研究では無視することはできないので,コーパスの存在はとてもありがたいものである.ただ大規模なコーパス構築には人的労力が膨大になるため,今回の領域研究というのはその意味でも意義深いものである.利用する立場の我々研究者もプロジェクトに関わっている各分野の方々に感謝せねばならない.
今回のワークショップの導入で言及されていた,素人的視点の「コーパス構築は業者に委託すればいい」や「コーパスは役に立たない」といった的外れの批判もこれまであったようだけれど,国立国語研究所も独立行政法人から大学共同利用機関法人になって,運営が比較的スムーズに行きそうとのことなので,がんばっていただきたい.